ドラマスペシャル 愛・命 〜新宿歌舞伎町駆け込み寺〜

イントロダクション

渡辺謙がドラマ化を渇望してやまなかった入魂の企画!

 国内外を問わずめざましい活躍を続け、世界中でその実力を称賛する声が鳴り響いてやまない日本屈指の名優・渡辺謙。2011年、混迷を極める日本で、人々が悩み、もがく中、渡辺の心に"ある強い思い"が芽生えた。

「私たちにはいま何が必要なのか、何ができるのか…。いまこそ世の中を、そして自分自身を見つめ直すときなのではないか」――そう考えた彼の中に、見つめ直すべきものの根源としてふつふつと湧きあがったのが 「愛、そして命」。渡辺はいまこそこの普遍的かつ決して人間が見失ってはならないテーマを自らに問いかけるとともに、現代の日本で未来を見失っている人々に希望を与えたいという衝動に突き動かされた。そして、彼は「本音で生き、弱者を救うために命をかける」真実のドラマに真っ向から挑もうと決意したのである。

 そんな渡辺がドラマの題材として取り上げたいと考えたのが、実在の人物、玄秀盛氏である。弱者を救済するためのNPO法人「日本ソーシャル・マイノリティ協会」(※現在、は一般社団法人「日本駆け込み寺」として活動している)を設立し、日本一の歓楽街・新宿歌舞伎町の片隅に「新宿救護センター」(通称「新宿歌舞伎町駆け込み寺」)を開設した人物。暴力や家出、ストーカー、多重債務、虐待など社会の歪みから生じるさまざまな悩みを抱え、「警察や役所などに頼ることもできない人々の最後の"駆け込み寺"として開かれた同センター。多いときには週300件以上の相談が寄せられる中、玄氏はこれまでに1万人以上もの人々を救ってきた。どん底の幼少期をおくり、中学時代からグレはじめ、成人後には金の亡者となって30以上もの職を転々としてきた。しかし、白血病の原因ウイルスに感染したことを知ったときから、玄氏は自らの死と向き合い、生きていることの証を得るために弱者救済のボランティア活動に目覚めたという。社会の表裏、絶望感を知り尽くしたからこそ、悩みを抱え喘ぎ苦しむ人々を助けることができる。そんな彼の魂の叫びにも似た生き様は、渡辺の心をとらえてやまなかった!

 いまこそ彼の生き様を描くことで、人々に真実の愛とは何か、命とは何かを訴えかけたい――そう考えた渡辺が是が非でもドラマ化を実現させるため、白羽の矢を立てたのがテレビ朝日だ。2009年6月、吉展ちゃん誘拐殺人事件や三億円事件など昭和を代表する事件の数々の捜査に心血を注いだ実在の刑事・平塚八兵衛氏の生き様を描き、「2009年国際ドラマフェスティバルにおいて単発ドラマ最優秀賞」を受賞した二夜連続の主演ドラマ『刑事一代』で、ただならぬ気迫を滲ませる迫真の演技を展開して第一夜19.4%、第二夜21.6%という高視聴率を記録し、多くの視聴者から絶賛の声を浴びた渡辺。彼は同作でタッグを組んだ「テレビドラマ界の巨匠・石橋冠監督との再タッグを切望! その情熱が遂に実を結び、「2011年冬、渡辺謙×石橋冠監督という豪華布陣でスペシャルドラマ化されることが決定した。

 もちろん主役を務めるのは渡辺自身。彼はこの入魂の作品で、玄氏をモデルとした主人公・平山秀盛(※韓国名=玄秀盛)を熱演する。

 「今回は『刑事一代』のときよりもさらに、ものすごい崖っぷちを1シーンごとに渡りながら、高みを目指しています。このように相当な緊張感を強いられる作品で、視聴者の皆さんの心を抉りたいと思います。いや、皆さんが見終わったときに"なんでこんなドラマを見てしまったんだろう"と思うくらい抉らなければ、冠さん(石橋監督)と組んだ意味がない! 視聴者の皆さんはもちろんのこと、僕たち自身をも徹底的に破壊したいと思います」と渡辺。この作品に並々ならぬ思いを託す渡辺だからこそ、必ずや見事に主人公を演じ切り、日本中の人々の魂を揺さぶる作品へと昇華してくれるに違いない!

渡辺が願ってやまなかった永作博美との共演も実現!

 主演の渡辺だけでなく、彼を取り囲む共演者も実に豪華! その筆頭に挙げられるのが、性別や世代を問わず幅広い支持を受ける演技派女優・永作博美だ。彼女が演じるのは、アフガニスタンの戦場で取材した過去を持つが、ある理由から日本に帰国したフリー・ジャーナリストの中原洋子。人生の目的を失い右往左往する中、平山と出会ったことで、彼を新たな取材対象として取り上げ、彼の人生に深く関わっていく女性だ。実は、永作のキャスティングには、渡辺と石橋監督の要望があった。「映画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』での永作さんを拝見して、女性のしたたかさ、深い強さを感じ、非常に印象に残りました。今回の洋子はものすごく大変な役だと思います。しかし、確かな技術と高いパッション、柔らかい雰囲気と内に秘めた強さ…そういった良い意味でのバランスの悪さを持つ彼女こそが、この役を演じるのにピッタリだと思いました」(渡辺・談)という渡辺と石橋監督は、彼女とともにこの"魂のこもった作品"を作り上げることを切望。そこから今回のキャスティングが実現したのだ。

キャスト

ストーリー

 平成13年秋、たまたま献血した平山秀盛(渡辺謙)は、自らが白血病を発症する可能性があるウイルスに侵されていることを知った。いつ発病するか分からない"爆弾"を体内に抱え、茫然としたまま街を彷徨う平山。そんな彼の目をあるものが捉えた。フリーマーケット会場で、中原洋子(永作博美)が売っていた"聖母子の絵画"だ。平山は吸い込まれるように、その絵画を見つめながらつぶやいた。

「俺、オフクロが4人おるんや」

 平山の美しい目、その奥に潜む深い闇、悲しみとも怒りともとれるその表情は洋子を釘づけにした。思わず洋子はその手を自らのムービーカメラに伸ばした。洋子は平山を撮り続けた。やがて平山は聖母子の絵画を買い、その場を後にした。その直後のこと。洋子はハッとなった。万札に挟まれた一枚の書類――そこには抗体検査の結果が陽性であることを伝える一文が記されていた…。

 それから1年後の夏。平山はウイルス感染を機に、乱暴に金儲けだけを追求してきた傍若無人な生き方を改め、せめて死ぬまでに人のためになることをしようと決意し、ボランティア団体を新宿歌舞伎町で立ち上げていた。その団体とはNPO法人「日本ソーシャル・マイノリティ協会」、通称「歌舞伎町駆け込み寺」――困っている人々に手を差し延べる"駆け込み寺"だ。そんなある日のこと、平山は歌舞伎町の横断歩道で、チンピラから借金の返済を迫られる、やさぐれた女と出会う。どこかで会ったことがある――平山はそう感じたが、女は会ったことなどないと言った。だが、意気投合した2人はそのままホテルへ向かい、ベッドに倒れ込む。ところがその瞬間、平山が"駆け込み寺"でかくまっている女性・マキの居場所を突き止めるため、ホストとチンピラの3人組が乱入。平山は拉致されてしまう。女はふと部屋に残された平山のカバンを開けた。中には見覚えのある聖母子の絵画が…。そう、女は1年前、その絵を買った平山に魅入られた洋子だったのだ!

 洋子は平山のカバンに入っていた詩集に記された彼の住所を頼りに、神戸へ。洋子を出迎えたのは平山の妻・安枝と2人の子どもだった。安枝に平山のドキュメンタリーを撮りたいと伝え、東京の住所を聞き出そうとする洋子。しかし、安枝は分からないと言ったかと思うと、あまりにも意外な言葉を投げかけ、洋子を送り出す。東京へ帰る道すがら、洋子の目から久々に涙がこぼれた…。

 やがて洋子は歌舞伎町で平山を見つけ出した。拉致された平山は男たちに崖から突き落とされたものの、平気な顔で谷底から這い上がり、その翌日には自分を突き落とした男が務めるホストクラブへダンプカーで突入! その豪快さに圧倒された男たちはもはや手出しすることはできなくなり、平山はホストに騙されてシャブ中毒にされていたマキを見事更生させていた。洋子は平山に言った。「あなたのドキュメンタリーを撮らせて」――かつてアフガニスタンの戦場で取材をしていたものの、フランス人の男に捨てられて日本に帰ってきてからは、取材したいと思う対象が見つからずにいた洋子。平山の存在はそんな彼女のジャーナリスト魂に火を点けたのだ。平山は"駆け込み寺"のPRになると考え、洋子の申し出を受け入れる。こうして平山を追い続けることになった洋子は、度肝を抜くパワーをもって"駆け込み寺"の活動に心血を注ぐ平山を見ると同時に、彼が決して人には見せない"本当の姿"を何度も垣間見ることに。そして、その"本当の姿"は彼女の中で"単なる取材対象の域を超える存在"となっていくが…!?

コメント

渡辺謙さんコメント
今年は日本の観客の皆様に何かを届けたいと考えておりました。
テレビ朝日、石橋監督と再び仕事をさせて頂く機会を得て、この企画を提案しました。
今、私たちはじっと耐える日々を過ごしています。
大きな壁にぶつかった後、どこに向かえば良いのか悩みながら・・・

このドラマは「叫び」だと思っています。
何処にもぶつけられない悲しみを、怒りをそして喜びを叫びたいと思っています。
竹山洋さんの刺激的な脚本を全スタッフ、キャストと格闘しながら
命の限りを尽くして叫びたいと思っています。

渡辺 謙


【南果歩さんとの共演について】
 彼女も石橋冠監督が大好きなのですが、一緒に仕事をしたことがなくて、今回の作品にも興味を持っていたんです。そのときはまだ平山安枝役が決まっていない状態で、彼女が「どうしてもやりたい」と言ったこともあり、今回の夫婦共演が実現する運びとなりました。
 彼女との共演シーンは神戸ロケだったので、僕は体を土地の空気になじませるためにも前乗りしようと考えていたんです。そうしたら、制作スタッフが「宿は一緒がいいんでしょうか?」と聞くので、僕は「別に一緒でいいんじゃないの?」と答えたんです。ところが、彼女に「何言ってるの! 仲悪い夫婦が一緒に泊まるわけないじゃない!」と怒られまして…(笑)。僕は結局日帰りにしました。
 彼女とは役に関して話すことはありませんでしたが、同じ家の人間が同じ台本を読み、それぞれが役について考えながら、同じ時間を過ごすことは初めての経験でしたし、妙な感じでした(笑)。

【クランクアップを迎えて…】
 久々に人間が持っている五感をすべて吐き出していく役をやらせて頂いたので、「演じている」というよりは「自分の体、魂をぶつけていく」ような感覚でした。撮影中はずっとものすごいビートを刻んでいたので、クランクアップの瞬間は達成感よりも"本当に終わったのかな?"という思いの方が強かったです。音は鳴り止んだけれど、心のビートはまだ刻まれ続けている――そんな感覚でした。終わったのを実感したのは翌日。起きたとき、非常に心が穏やかだったのを覚えています。
 そして今――。改めてスタッフを含め、みんなが同じところを見ながら撮影に臨んでいたこと、綺麗なお弁当箱のようなドラマではなく、心を抉るような叫びが詰まったドラマを作ろうと燃えていた日々が思い返されます。
 僕自身はもちろんのこと、この作品に関わったみんなのチャレンジが凝縮された、まさに「挑戦作」。この作品が皆さんにどう受け取られるのか、不安でもあり楽しみでもあります。

永作博美さんコメント
【クランクアップを迎えて…】
 ホッとしています(笑)かなりやんちゃな女性で台本からは若い印象を受けていて少々不安がありました。ただ撮影が進むにつれて、「必死で生きることに若いも老いもないですね。。」と、渡辺さんとお話したのを覚えています。それくらい情熱的な女性でした。

【謙さんと共演しての感想…】
 脚本の読み込みかたが凄い。いつも最善を探してる。当たり前のようですが、それを続けることはなかなか困難で、それがシーン毎に新しい台本じゃないかってくらい変化していって…とても楽しく新鮮な現場でした。スタッフは大変だったと思いますが、何もなかったかのようにスイスイとと飲み込んでゆくスタッフにもあっぱれ!と思いました。

プロデューサーコメント
 一昨年のドラマスペシャル「刑事一代」に続き、渡辺謙さんとご一緒にドラマ創りが出来ることを大変嬉しく思います。"自分の命をかけて、弱い立場の人々を救う"実在の人物を渡辺謙さんが迫真の演技で演じきり、また共演に、進境著しい女優・永作博美さんを迎えて"究極の大人の愛のドラマ"が展開されます。この冬イチ推しの深い人間ドラマです。どうぞご期待下さい。

藤本 一彦

スタッフ