奥下和彦 (おくした・かずひこ)
1985年6月23日生まれ 金沢市出身 
金沢美術工芸大学卒。
現在、東京藝術大学大学院アニメーション専攻中。

「赤い糸」を最初に思いついたのは、金沢美術工芸大学4年生の時でした。幼なじみで、3年以上付き合っていた彼女にフラれたのがきっかけです。当時、映像の勉強をしていましたが、失恋で制作意欲も失い、何もしないまま半年が過ぎた頃、
「このままじゃいけない」ということで、今の気持ちを作品で表現しようと思ったのです。
たくさんの人たちが暮らしている中で、人が出会って、別れ、また出会っていく・・・。
「人と人のつながりってなんだろう」と突き詰めて考えたとき、思い浮かんだのが「赤い糸」でした。
以前からライブペインティングで、一筆書きをやっていたこともあって、
一本の「赤い糸」だけで、「人のつながり」を表現してみようと思いました。

こうして出来上がった僕の作品を、テレビ朝日の方がご覧になり、
「報道ステーション」のオープニングを作ることになったわけですが、
最初に話を聞いた時、現実感は、まったくありませんでした。
「何の実績もない、まだ学生の僕に、こんな仕事が舞い込んでくるなんてありえない」というのが正直な感想でした。
それでも、15秒の番組PRを作ってみてから、ようやく現実感がわいてきて、「これはエライことになった」と、気づきました。

そして、本格的な制作が始まったわけですが、「赤い糸」で「人のつながり」を考えたとき、確かに、真っ先に思いついたのは「恋愛」です。
でも、「人のつながり」は、それだけではないような気がしました。
たとえば、僕のようにのん気に暮らしている人間は、親、兄弟、友達、先生など、たくさんの人に助けてもらって生活しているんだな、と感じることがよくあります。
また、田舎から出てきて、都会の満員電車に乗ったときに、ふと思ったことがありました。いろんな職業の、いろんな境遇の人が、ぜんぜん知らない顔して乗っているけれども、
実はどこかで、めぐりめぐって、誰かが誰かの役に立っていることもあるかもしれない、ということです。
そして、インターネットで作品を発表すると、まったく知らない国の人から感想が返ってきて、
いい作品を作れば、国も人種も関係なく評価してもらえるんだな、とも感じました。

そんな中で思いついたのが、5つのテーマです。

「成長」 人は生まれ、育ち、また命を生んでいくこと
「職業」 人は誰かの役に立っていること
「恋愛」 人は誰かとめぐりあうこと
「世界」 人はこの世界に生きていること
「家族」 人は家族に支えられていること

テレビ朝日のCG制作スタッフの方々にも手伝っていただきながら、
約1ヶ月かけて、ようやく作り上げることが出来ました。

プレッシャーと不安はありましたが、自分に出来ることは精一杯、表現したつもりです。
ご覧くださった方々に、ほんの少しでも、あたたかい気持ちになってもらえたら、こんなにうれしいことはありません。

奥下和彦