● ● ● ● 9月3日 ● ● ● ●

司会 吉澤 一彦 (テレビ朝日アナウンサー)
矢島 悠子 (テレビ朝日アナウンサー)
ゲスト 濱島 達史 (テレビ朝日スポーツ局スポーツセンター)

放送内容

早稲田実業、悲願の初優勝で高校野球の素晴らしさをあらためて見せてくれた夏の甲子園。
そんな高校球児たちの熱いドラマを連日お送りしてきたのが「熱闘甲子園」です。
今回は、番組初参加の一人のディレクターに密着し、番組づくりの舞台裏から甲子園の感動に迫ります。


■ VTR(1)

「熱闘甲子園」がカメラを向けたのはヒーローだけではありませんでした。
試合に出られないような無名の選手にもスポットを当てました。
日本各地から甲子園を目指した若者たちの情熱。
カメラの向こう側の選手たちと同じように熱い魂を持った番組作りが続けられてきたのです。

8月3日。
「熱闘甲子園」を制作している大阪のABCに北海道から九州まで、
全国からテレビ朝日系列のスタッフが集結しました。
まずスタッフに配られたのは番組作りの基本方針。
そこに、番組がこだわり続けている「熱闘ティスト」について書かれていました。


●木村 進プロデューサー(ABCスポーツ局)のコメント
「“熱闘甲子園”は今年で26年目。試合の流れ・選手の表情を改めて大事にしたい。
甲子園で繰り広げられる熱いゲームの主役である選手たちを中心に指導者、応援団、
ベンチ入りできなかった選手たち、選手を見守る家族といった多様な人間ドラマ、
人々のつながりを追求したい」


ABCのスタジオに番組のセットを組み、またスタッフのデスクや編集機材も持ち込まれ、
編集から放送まで、この空間で全てが出来るようになっています。会議が終わったあと、
スタッフ全員が、組み合わせ抽選会へ。
選手たちと接触できる貴重な機会です。 「“熱闘甲子園”の基本は足で取材しろ」
スタッフ全員が手分けして選手やチーム関係者に番組用のネタをリサーチします。
相手は高校生。配慮しながら、選手から少しずつ話を聞き出していきます。


●濱島 達史ディレクターのコメント
「プロ野球選手と違って取材慣れしているわけではないので、
まずうちとけてからいろいろ聞き出していくよう心がけています。」


局に戻ったスタッフは、ふたたび会議を始めました。
番組作りで大切な「注目選手のキャッチフレーズ」作り。
それぞれが案を出し合って、選手それぞれにキャッチコピーを考えます。


●斎藤隆平プロデューサー(テレビ朝日スポーツ局スポーツセンター)のコメント
「大会の15日間をいかに盛り上げるか。高校野球っておもしろいね、
といかに後で思ってもらえるか。そういう意味でキャッチフレーズを考えます」


では、そのキャッチフレーズをご覧いただきましょう!

「尾張のプリンス」 愛工大名電 堂上直倫
「島人魂」 八重山商工 大嶺裕太

「北の怪腕」「北のドクターK」
これは、駒大苫小牧の田中将大投手のキャッチフレーズの原案。

そして、決まったのは「世代最強エース 駒大苫小牧の田中将大投手」

「無尽蔵のスタミナ」「ミスターポーカーフェイス」
これは、早稲田実業の斎藤祐樹投手のキャッチフレーズの原案。
最終的には「クールな豪腕 早稲田実業の斎藤祐樹」

17人のディレクターが、二人一組になって48試合を担当していきます。
濱島ディレクターの担当も決まりました。
大会初日の、西東京代表・早稲田実業 対 大分代表・鶴崎工業高校。
大会三日目の長野代表・松代高校 対 鳥取代表・倉吉北高校。

濱島ディレクターは、創立100周年で甲子園初出場を果たした
松代高校の取材から始めることに。電車と車を乗り継ぎ、およそ1時間。
大阪郊外の練習グランドへ。
注目しているのは身長165cmと今大会で一番小さなキャッチャーですが
ホームランを20本以上も打っているチームの中心バッター松沢賢也選手です。
練習を終えてバスに乗り込むまでのわずか10分間の取材でしたが、
松沢選手のチームを引っ張っていこうとするひたむきさに濱島ディレクターは、
心を動かされたようでした。

夜、局に戻って、大会初日の早稲田実業と鶴崎工業の打ち合わせ。
一緒に担当するのは釼持ディレクターです。そしてカメラマンと打ち合わせ。
試合の狙いやどんな画を撮って欲しいかを説明します。
釼持ディレクターは、早稲田実業の斎藤投手を中心に展開したいと伝え、
早稲田のマークや背番号などを撮って欲しいと映像の具体的な注文を出していました。

そばで取材テープの準備をしています。
一日に使うVTRは、20分収録用でおよそ200本。
大会期間中には、3000本ものテープを使用することになります。

8月6日、大会初日。観客数4万人を越えました。
開会式直後、濱島ディレクターは、倉吉北のピンチランナー専門、
北風祐貴選手に話を聞くため選手出口に向かいます。
たくさんの報道陣が選手に話を聞くために集まっていました。
この日の気温、37度。
立っているだけでも、辛そうですが、代表49チームの選手たちが
いつ出てくるかもわからないので気をぬくことが出来ません。
50分ほど待ったところでやっと選手が出てきました。
待つこと1時間。倉吉北の選手が出てきました。

ところが、北風選手を他の記者がぴったりマーク。
取材ができるのは、出口から駐車場までのわずか数十メートル。
濱島ディレクターは結局、話を聞くことができませんでした。
次に向かったのは甲子園球場の室内練習場。
早稲田実業の斎藤投手がここで試合前の練習をしています。
テレビ、新聞、雑誌。大勢の記者が集まりましたが決められた取材時間は、10分。

先ほどは思うように行きませんでしたが、ここでは、なんと濱島ディレクターが、
現場を仕切っていました。関東地区予選番組「甲子園への道」で早稲田実業の
取材を続けてきた実績が生かされたようです。

甲子園球場の記者席からABCのスタッフルームにいる釼持ディレクターに、
斎藤投手取材の結果を報告。そしてカメラマンには、選手の表情をしっかりと
撮って欲しいことを確認。試合が始まりました。
力投する“クールな豪腕” 斎藤投手の表情を熱闘カメラが狙います。

試合は、13−1と早稲田実業の一方的な試合展開となりました。



■ VTR(2)

8月7日。試合を翌日にひかえた倉吉北高校を甲子園に近い練習グランドで取材。
カメラがとらえたのは、甲子園出口で話を聞けなかった代走専門の北風選手。
そして、全員が先発可能という倉吉北高校が誇る4人の投手。
どこまで勝ち抜けるか。この投手陣がカギをにぎっています。
代走専門の北風選手を取材中に濱島ディレクターが発見したのが、
帽子のツバに書かれた文字「愛する人はいつも心の中にいる」。
寮生活をしている北風選手を励まし続けてくれた両親の思いを帽子の中に込めたそうです。


●濱島ディレクターのコメント
「取材した両チームの選手とも出したい。試合展開を見ながら決めたい。」


一緒に試合を担当する佐久間ディレクターに、
北風選手の思いをなんとか形にしたいと、熱意を伝えました。
倉吉北と松代の試合は3つのポイントにこだわることにしました。
倉吉北は、代走、北風選手。そして、四人の投手の継投。
松代は、大会一小さなキャッチャー松沢選手。第一打席に注目することにしました。

倉吉北高校と松代高校は、この日の第三試合。
現場を担当する佐久間ディレクターが、松沢選手を取材。
スタッフルームから濱島ディレクターは、球場の佐久間ディレクターに連絡、
松沢選手の第一打席に注目して欲しいという確認です。
試合がついに始まりました。
注目の松代、松沢選手の第一打席、続く第二打席でも凡打。
濱島ディレクターの狙い通りにはいきません。濱島ディレクター、がっくり。

ところが、ここで思わぬ展開が。7回表、倉吉北の打線が爆発。
松代の背番号10、堀投手が降板。中継映像を見ていた濱島ディレクターは、
堀投手が泣きながらマウンドを降りるのを見逃しませんでした。
わずか3秒ほどのこの映像で、濱島ディレクターの心が大きく動きました。

濱島ディレクターは早速、現場にいる佐久間ディレクターに
ベンチの堀投手の表情を狙うよう指示。
そして、試合は八回表、倉吉北の攻撃。
濱島ディレクターが注目していた北風選手がピンチランナーで登場。
しかし、2点リードしていたので、ドラマチックな見せ場にはなりませんでした。
ゲームは、このあと、8回裏、松代が同点に追いつき、シーソーゲームに。


●斎藤プロデューサーのコメント
「ゲーム展開の面白さを中心に選手の色んな表情を追った方がいいのではないか」


そして、試合は延長戦へ。11回裏、松代高校のさよなら勝ち。
濱島ディレクターは、甲子園の佐久間ディレクターに、号泣した堀投手のインタビューと
それを受けて最後まで投げた3年生エース福井選手の
2ショットインタビューを撮って欲しいと連絡。
試合後の選手のインタビューは、わずか7分間。
タイミングよくしないとても難しい2ショットのインタビューでしたが…、実現しました。
さあ、あとは編集です。構成をあらためて練り直し、
濱島ディレクターの3つのこだわりはすべて捨てることになりました。


●濱島ディレクターのコメント
「取材してきたことはすべてカットしました。今まで取材してきたことは
一体何だったのかと思いますが、試合展開はそれを上回るものがあった。」


濱島ディレクターは、号泣した背番号10の堀投手を中心に
ゲーム展開の面白さをみせていくことにしました。
VTRの始まりは、松代の堀投手が泣きながらマウンドを去った、7回から。
シーソーゲームの試合展開と松代の堀選手と福井選手の表情をうまく盛り込みながら
ついにVTRが完成しました。


■濱島ディレクターの話

「せっかくネタを事前に準備していても試合展開が面白くなれば
すべてを捨てることがある。放送時間は決まっているので“何が熱闘なのか”考えていて、
ぎりぎりにVTRが完成することが多かった。」
「優勝した早稲田実業の斎藤佑樹選手は西東京大会のときはインタビューしても
ひと言しかしゃべらないことが多かったが、甲子園では注目が高まる中で
たくさん報道陣に話すようになり、大会を通して人間的にもかなり成長したな、と実感した」




番組では、テレビをご覧の皆さまからのお問い合わせ、ご要望をお待ちしています。

次回の放送は、9月17日(日)の予定です。