○ロケに行く前に「原爆」「戦争」に対してどんなイメージをお持ちでしたか?
多くの犠牲者を出した「原爆」、そして痛ましい「戦争」について、学校ではほとんど教わりませんでしたが、「なぜ無くならないのだろう」という漠然とした興味があり、個人的に本を読んだことがありました。戦争に関する作品に出演する際、その役作りのために、古本屋で資料を探したこともあります。
…ですが、あくまでも「知識」として、「歴史の1ページ」として、「原爆」や「戦争」をとらえていたという感じではないでしょうか。

○ロケで感じたことは?
今回、広島やアメリカをまわり、被爆者の方や元原爆投下部隊の兵士たちと出会い、またテニアン島など歴史の舞台も訪ねました。ロケを終えた今、これまでただの「知識」だったことが、人間としての痛みや感情を伴う「体験」に変化しました。

日々、科学技術は進歩し、僕たちはその恩恵にあずかっています。携帯電話・インターネットなどによって、人と人のコミュニケーションの方法も変わりました。でも、そのことによって「面と向き合ってふれあう」「人を殴れば自分の手も痛い」といった、人間が本来大切にしていたはずの「距離感」が失われてしまったような気がします。相手の痛みが感じにくい時代になってしまったのではないかと…。

だからシンプルで当たり前のことかもしれませんが、「人を思いやる」「相手の痛みを自分の痛みとして感じる」ということを、次の世代の子供たちに伝えていかなければ…と思いました。一人ひとりがそんな気持ちを最低限持たないと、戦争が起きたとき、個人は国家のおもちゃ、道具になってしまう。また同じ悲劇を繰り返してしまう、と。


○視聴者に対して伝えたいこと
「原爆」は決して避けてはならない、忘れてはならない「歴史の事実」です。しかし63年という歳月がたち、当事者の生の声が聞けるギリギリの時期にさしかかっています。この事実を見逃してしまうのも簡単ですが、踏みとどまって、次の世代に伝えていくのも私たち皆の仕事です。この番組をなにか感じる時間にしてもらえたら、うれしく思います。