戦評
浅田真央 惜しくも銀メダル、男子は高橋・織田ダブル表彰台!
ここまで、すべてのグランプリシリーズで表彰台に乗ってきた日本勢。なかでもより高い位置に上った精鋭5人が挑むグランプリファイナル。
しかし波に乗っている男女シングルとも、最強のメンバーで挑んだにも関わらず、ファイナルは大きな壁となって彼らの前に立ちはだかってしまった。
男子シングルはSP前にエヴァン・ライサチェクが棄権、SP後にジョニー・ウィアーが棄権。アメリカを代表するふたりが消え、頂点を競うのはたった4人という少し寂しい戦場に。しかし強豪国といわれるロシア、アメリカ、カナダを退けて最後の4人に残ったのは、男子シングルにそれほど高い実績はない日本とフランスの2選手。いまいちばん勢いにのる2国の直接対決となった。
初日SP。ジュベールが4回転を、高橋大輔とプレオベールがトリプルアクセルをきっちり決めるなか、なんといちばん安定感が高いはずの織田信成が、ふたつのジャンプミス。本人は話さなかったが朝の公式練習で靴紐のトラブルがあったようだ。「国際大会での2ミスは始めてかな?」と苦笑いするほどの大失敗でSPは4位。ジュベールにぴったりつけて2位の高橋大輔とは明暗を分けることとなった。
しかし翌日のフリープログラム。その明暗はあまりにもくっきりと逆転することになる。前日の悔しさから気持ちを切り替え、前夜は少女漫画を読んでリラックスしたという織田信成。2度のトリプルアクセルもいつもどおりの確実さで決め、147.71点を獲得。フリーだけなら2位の位置につける。
一方で思わぬアクシデントに襲われたのが高橋大輔だ。今シーズン2度目となる4回転も決め、パッション爆発という演技でスタート。しかし後半のジャンプでつまづき始め、見せ場のはずのストレートラインは今にも止まりそうな、か弱いステップに。悪寒、腹痛などの症状が朝から出ていたといい、プログラム後半はほとんど気力だけで滑りきったという状況だ。このアクシデントで、高橋はフリー3位に。
注目されたフランスのジュベールも、大技4回転は1回どまりに終わった。もし織田のSP、高橋のフリーにそれぞれアクシデントがなかったら……。
しかしそれでも史上初めて、表彰台にふたりの日本勢の姿がある。本当に強くなった日本男子。さらなる歓喜は、来年のグランプリファイナルまで、楽しみにとっておこう。
男子以上に残念な結果となったのは、3人が出場した女子シングルだ。やはり彼女たちも男子同様のアクシデントに襲われた。ショートでダブルアクセルを失敗して5位と出遅れた村主章枝は、オフィシャルバスの到着が送れ、試合直前に会場入りすることに。安藤美姫も少し体調が優れなかったという。
しかし女子の場合、アクシデント以前に、それぞれの課題を見直すことが必要になりそうだ。
村主章枝のジャンプに安定感がないのは、シーズン前半はいつものこと。今年はそれに加え、プログラムがまだ体にしっくりなじんでいない点が気にかかる。3回転‐3回転などの大技がない分、プログラムコンポーネンツでしっかり7点台を獲得しておきたいはずだが、今年から振付師を変えたことも影響しているのか、見る人を引き込むようなベテランらしい演技を見せられない。今後、個性的なプログラムをどこまで滑り込んでいけるか、ジャンプミス以上に気にかかるところだ。
浅田真央の課題はやはり精神力。アルトゥニアンコーチの話からも、練習でのトリプルアクセルの調子に問題はない。しかし試合の緊張感の中では大技が決めれらず、さらにはアクセル失敗による動揺で演技全体の精彩を欠いてしまう。この弱さは、なんとかして払拭したい部分だろう。
今シーズン好調と言われてきた安藤美姫が、フリーでかつてないほど崩れてしまったことも気にかかる。体調不良だけが原因ならばいい。だが、自信を持って決められるはずのジャンプが、ひとつの失敗を皮切りに次々シングルになっていく様は、先シーズンの不安定な安藤美姫に戻ってしまったようにも見えた。
体調が悪くとも最後まで滑りきった高橋大輔、また、怪我を乗り越えて22歳にして初めてのファイナル表彰台にたどり着いたスイスのサラ・マイヤー。彼らの強さを浅田真央や安藤美姫が身につけていくことはできるだろうか?
若くして世界に追われる立場の過酷さは想像を絶する。しかし心が強くなれば、彼女たちはもっともっと強くなる。男子シングル同様、お預けとなった表彰台の一番高いポジション。来シーズンファイナルに向けて、また新しい戦いが始まる。
文/Hirono Aoshima
みどころ
氷上クライマックス 美の世界一決定戦 GPファイナル
GPシリーズを勝ち抜いてきたわずか各6人ずつしか出場を許されないこの大会。ついに「世界一」が決まります。
女子シングル、日本勢は浅田真央・安藤美姫・村主章枝、世界からはユリア・シェベスチェン(ハンガリー)、サラ・マイアー(スイス)、そして韓国の天才少女、キム・ヨナが出場。アメリカ大会3位も、GPシリーズ最終戦の日本大会、史上最高得点で優勝した浅田真央、アメリカ大会優勝、フランス大会準優勝と昨シーズンからの不調からの奇跡の復活を果たした安藤美姫、トリノ五輪4位、世界選手権銀メダル、GPシリーズも安定した演技でファイナル進出を果たした村主章枝の最強3人娘。日本勢表彰台独占の可能性も十分考えられる!!
男子シングルは今年、絶好調の高橋大輔と織田信成が出場。ライバルはフランス大会とロシア大会を圧倒的な力で勝ちあがったブライアン・ジュベール(フランス)やエバン・ライザチェック、ジョニー・ウィアーのアメリカ勢など強力。日本大会で4回転ジャンプを成功させた高橋だけでなく織田も4回転ジャンプに挑むと宣言した。優勝候補ジュベールも、ロシア大会で4回転ジャンプを3度成功させているだけに優勝には「4回転」が重要なカギとなる。男子、悲願の初優勝なるか!?
白熱する「日本VS世界」!!ついにクライマックスをむかえるグランプリファイナルから目が離せない!!