「フロリダ 洞窟ダイバーの挑戦!」 〜ナゾの地下水脈を大冒険〜

アメリカ、フロリダ半島北部に広がる森林地帯。地底には世界最大級の水中洞窟が数千キロにわたって広がっており、神秘的な美しさをたたえる泉が大小合わせて700以上も点在します。透明度はなんと50メートル以上! 「クリスタル・クリア」と呼ばれるほど澄んだ水が1日に300億リットル湧き出、フロリダの一般家庭の9割で、飲み水として使われています。
この美しい水は、地元の人々にとって特別な存在です。地元で生まれ育った洞窟ダイバーのウェスさんは、その素晴らしさを人々に伝えようとこれまでに撮り溜めた写真が4万枚あります。何百回と潜ってきましたが、そのたびに新しい洞窟見つかるそうです。「まるで巨大な迷路」とウェスさんは言います。
しかし、この奇跡の水に今異変が起きているのです。藻が大繁殖し、他の植物や魚が姿を消してしまいました。さらに、泉で泳いだ後、アレルギー症状を訴える人が現れ始めたのです。フロリダ州政府の調査の結果、多くの泉で硝酸塩の濃度が非常に高くなっていることが分かりました。しかし、泉の周りには汚染源となるようなものが見当たりません。だとすれば、地下水脈を通じて、どこからか流れてきているに違いありません・・・・・・そこで州政府は洞窟ダイバーのウェスさんたちに地下洞窟の探検を依頼し、誰も知らない水脈の地図を作ってもらうことにしたのです。光の届かない、迷路のような水中洞窟は、ベテランダイバーにとってもかなり危険です。これまでに、フロリダ全体で300人以上のダイバーが命を落としています。そのため、ウェスさんたちは命綱を引っ張りながら進んでいきます。洞窟を曲がるたびに深度計やコンパスを使って、正確な位置を記録していきます。未知の洞窟をどんどん進んでいくと、汚染のひどい場所にたどり着きました。現場の浮遊物をサンプリングしながら進みます。
そして調査終了後、ウェスさんは早速洞窟の地図を作成。そして意外な事実を発見しました。汚染源はなんと、泉から30キロも離れた人口1万2千人の振興都市、レイク・シティーだったのです。かつては森だった場所に、次々と住宅が建てられたのですが、下水道がなく、簡易的な浄化槽を使っているため、汚水が地中へと流れ出しました。そしてその中に硝酸塩が含まれているのです。また、アメリカの住宅につきものの、芝生の庭に撒かれる肥料にも硝酸塩が入っています。その他、フロリダで盛んな畜産業から出る動物の糞尿や、農業で大量に使われる肥料などが地中に流れ出すことで、水脈を汚染していたのです。「私たち自身が汚染の原因だった。こんな皮肉なことがあるのか」とウェスさんは嘆きます。
再び、あの美しい泉を取り戻すために、何ができるのか。ウェスさんは、自分が撮り続けてきた写真や映像を、街の映画館で人々に見てもらい、汚染の現実を知ってもらう活動を始めました。「最大の挑戦は、自分たちの飲み水を自分たちで汚しているという事実を受け止めることです」とウェスさんは言います。100年後もフロリダの泉が「クリスタル・クリア」であることを信じ、彼は活動を続けていきます。
ナレーター:山本 太郎
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フロリダの地下水脈の成り立ち
実は2500万年前のフロリダ半島は海の下にあった。そのため、地層の多くが珊瑚礁でできた石灰岩である。そこに雨が降り、解けやすい石灰岩が侵食されることで無数の地下洞窟が生まれた。特にフロリダは熱帯特有の大雨が降るため、この水が地中へとしみこんで、巨大な地下水脈となった。時には数十年もかけて地中を流れ、ミネラルなどを吸収して、やがて、泉となって湧き上がるのである。 -
硝酸塩
窒素化合物の一種で、植物の栄養素になるもの。適量だと問題ないが、それが高濃度になると、生態系を破壊し、人体にも有害だと考えられている。
