「京都渡月橋 奇跡の灯り」 〜クリーンなミニ水力発電ってナニ?〜

今年の秋、日本を代表する紅葉の名所、京都・嵐山の渡月橋が、ライトアップされました。暗闇に浮かぶ渡月橋はなんとも幻想的なものでした。 実は、この明かりをともしているのは、ミニ水力発電です。
ミニ水力発電は、水の流れを利用して電気を起こします。ですから、大きなダムを作る必要がなく、自然に負荷がかかりません。太陽光発電と違って、24時間電気を作り続けることができますし、風力発電よりも安定した電力供給ができます。
名古屋の電気技師、石田正さんは、20年も前から全国にこのミニ水力発電を設置し続けてきました。例えば、岐阜県の山奥にたたずむ温泉宿。電気がないこの宿の主人の暮らしを支えているのもミニ水力発電です。9年前、宿の裏を流れる小川を利用して石田さんが作りました。高低差13メートル、出力1KWの発電機で、常時50Wの電力を作り出しています。同じく岐阜県の郡上八幡、母袋温泉。700年以上前から作り続けられている「いぶり豆腐」を作る豆腐店にも、石田さんは3年前、ミニ水力発電を設置しました。豆腐を作る工場の半分の電力を水力発電でまかなっています。経済効果は月に2万円ほどになるそうです。
ミニ水力発電は、2メートルの落差があれば発電ができます。水の流れにそって、水車の内蔵された発電機をおく、シンプルな構造です。水の落差を利用して水車を回します。その力が発電機に伝えられて、電気が生まれるのです。使った水は元に戻るので、水も無駄にはなりません。まさに究極のクリーンエネルギーです。
しかしながら、今の日本ではあまり普及していないのは、なぜでしょうか?
それは、水の利用には複雑な権利関係がつきまとうからです。一級河川は、国土交通省、農業用水は農水省といった管轄が別れ、それぞれの許認可が必要です。それが大きな壁となってきました。
この秋、ライトアップされた渡月橋が架かる桂川は一級河川。川の水を使った電力発電なんて前例がない、景観が壊れる、などといった理由で、これまで国土交通省はこの計画に認可を出していません。その流れを変えたのは、今年の2月に発効された京都議定書。京都議定書のお膝元で、クリーンエネルギーの象徴であるミニ水力発電を行うことは、いいタイミングと判断されたのです。
一昔前まで、「電力の落ち穂拾い」と揶揄されてきたミニ水力発電。今や、CO2削減の切り札として、世界中に広がり始めています。ライトアップされた渡月橋が、日本での大きな一歩となったに違いありません。
ナレーター: 室井 滋 ナビゲーター:石原 良純
-
ミニ水力発電
日本では、昭和20年代から「農村漁村電気導入推進法」に基づき、電気がない村に農協や水利組合が設置してきた。今でも、広島、島根、鳥取など中国地方では約50カ所の発電所が稼働している。 -
渡月橋ライトアップ
嵐山保存会が運営。発電機は橋の上流約50メートルにある落差1.7メートルの堰に取り付ける。出力は最大5.5キロワット。照明は風情を損なわないよう石造りの灯籠(とうろう)を模す。直径20センチ、高さ70センチの円筒形で、計60個を設置する。 -
京都議定書
地球温暖化を国際協調で防ごうと、97年12月の温暖化防止京都会議で採択された合意文書。条約と同等の効力を持ち、二酸化炭素やメタンガス、代替フロンなど温室効果のあるガスの排出削減を先進国に義務づけた。
