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瀬川 三十七
[ 映像作家 ]

2015.11.14

 

瀬川三十七(せがわさんじゅうしち)
[ 映像作家 ]

江戸時代に描かれた東洲斎写楽の浮世絵『三世大谷鬼次の奴江戸兵衛』。
描かれている人物の頭に、なんとタライが落下する。
浮世絵をパソコンで加工した5秒ほどの動画。生み出したのは映像作家・瀬川三十七。

「この浮世絵は金を奪おうとしている強盗を描いた絵なんです。だから天罰じゃないですけれど、タライを落としてみました。」

浮世絵の設定を発想のヒントにする瀬川…
動画制作は、地道な作業の繰り返しだという。例えば、歌舞伎の舞台をアイドルのコンサートのようにした動画では…

「歌舞伎の舞台に立つ5人の女性に、お客さんがペンライトを振っている動画なんですけれど、元の浮世絵には200人ほどのお客さんが描かれているんです。その一人一人の手の位置にペンライトを置く作業だけで丸1日かかりました。」

浮世絵に現代の物を組み合わせた瀬川の作品。そこに込められたデザイン・コードとは…

【表情が動く】

「浮世絵に現代の物を組み合わせると、描かれた人物の表情が動いて見えるんです。
例えば、茶屋から富士山の眺めを楽しむ人々を描いた『冨嶽三十六景 東海道吉田』に、
新幹線を走らせると、描かれている女性が、“見て見て0系新幹線よ”っていう風に女子トークをしているように見えるんですね。」

浮世絵を好き勝手にアレンジする瀬川にも、後ろめたさがあるようで…

「原作者がまじめに作った浮世絵に対して、僕がふざけて現代の物を登場させているので、
すみませんという謝罪の気持ちがありますね。」