荒木智(あらきさとし)
[ ジオラマビルダー ]
川のせせらぎまで聞こえてきそうな真夏の風景。実は、ジオラマ模型。作ったのは、ジオラマビルダー 荒木智。荒木がモチーフにするのは、少年時代に目にした風景。
「私の家は引っ越し一家で、北は青森から南は鹿児島まで、かなり引っ越しを重ねて来たんですよね。作品『西瓜の夏』は熊本県、作品『トタン壁の造船所』は広島県をイメージするなど、引越した土地の風景を立体物として表現したいと思ったんです。」
思い出の風景を極限までリアルに再現しようと、荒木は本物の砂や草まで材料に使う。
「例えば、作品『てんとうむし』に使用している雑草。これは本物の雑草を細かく裂いて使用すると、かなりリアルな雑草として作品に反映することができるんです。」
鉄のさびていく様も忠実に再現した荒木の作品。そこに込められたデザイン・コードとは…。
【匂い】
「その場所の匂いが漂ってくるようなところまで、再現を高めています。匂いというのは、記憶を引き出す最大の要素なんです。」
匂いが漂っていると錯覚させるくらいリアルに作り込むことで、見る者を風景の中に引き込む。
「作品『赤灯台の防波堤』は、長崎県にある小さな漁村を描いた作品です。アスファルトにしみ込んだ潮の匂いが感じられるような作品になればと思って作っています。」
荒木にとって、完成したジオラマを見せたい一番の客は自分自身。
「自分が見て“わっ!”という驚きがあれば、ジオラマを見た第三者にも驚きが伝わるんじゃないかなと思いますね。」