阿部岳史(あべ たけし)
[ アーティスト ]
規則的に並ぶ、色のついた立方体。離れたところから見ると、一人の男性の姿が浮かび上がってくる。生み出したのは、阿部岳史。木製の立方体(キューブ)を均等に並べ、モザイク画のような作品を作るアーティスト。
作品のモチーフになっているのは…
「この男性は、作品制作のためにフィンランドに行った時に現地で知り合った方です。もう今は会わなくなってしまった人がモチーフですね。」
六本木ヒルズの展望台から眺めた、東京タワーの見える風景がモチーフの作品では…
「ぱっと見て東京タワーだとわかるよりも、10秒くらい見てから東京タワーだとわかるくらいにしたかったんです。」
人物や景色をあえて、ぼんやりと表現する阿部。
その作品に込められた、デザイン・コードとは…
【記憶の解像度】
阿部が表現したいのは、人の記憶の曖昧さ。
キューブを貼りあわせて作った立体的な公衆電話は、プッシュボタンの配列をあえて省いてある。
「公衆電話の色合いや形は思い出せるけど、『ボタンの配列はどうなってたっけ?』、『非常ボタンはあったんだっけ?』とか細かい部分を思い出せないんですよね。」
電車の中で座席に人が座っている景色など、日常の一コマをモチーフにすることもある。
「一番大切な記憶は、誰もそんなところを写真に撮ろうとは思わないような、日常の記憶なんじゃないかと思いますね。」