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AKI INOMATA
[ 現代美術家 ]

2018.06.02

 

AKI INOMATA(あき いのまた)
[ 現代美術家 ]

犬を散歩させているひとりの女性…何気ない風景に見えて、実はある実験的な作品。
なんと、犬が着ているのは女性の髪で作った服で、女性が着ているケープは犬の毛で作られている。
作ったのは、AKI INOMATA。生き物と共に作品を作る現代美術家。

作品制作のきっかけは、「犬の毛と人間の毛を交換してみたい」という単純な興味だった。

「人とペットの関係性を変えたいと思ったんです。犬の毛を大量に集めていたら、アレルギーになってしまったんですよね。」

小さな建物のオブジェのように見える透明な物体は、ヤドカリの殻。
ヤドカリが背負っていた貝殻をパソコンにスキャンし、中の形まで完璧に仕上げた自信作だったが…

「私が作った殻には、全然引っ越さなかったんですよ。それで、ヤドカリについて論文を読んだり、インターネットや図書館で情報を調べました。作品を制作する時は、いつも調べ物が9割という感じですね。」

生き物に翻弄されながらも、生き物との作品作りをやめないINOMATA。
その作品に込められたデザイン・コードとは…

【コントロール不能】

「生き物は、思い通りにいかないし、コントロールがきかないというところも大きいんですけど、制御が出来ないような他者と何かを一緒にやってみたいんです。」

細かく切った女性服の生地を雌(めす)のミノムシに与えると、白やピンクの端切れ、ビーズまで使ってミノを作り上げた。ミノムシの雌は、ミノの中で一生を過ごすため、雄(おす)が求愛してくるのをひたすら待つ習性があるというが…

「きれいなミノをつくって雄が寄ってくるのを待っている状況が、私たち人間とそっくりだな、と思いますね。」