感染症〜日本に迫る恐ろしい現実

  地球温暖化が引き起こす人間と蚊との戦い。蚊が運ぶ熱帯の感染症・デング熱が、いま北上を続けている。デング熱はウイルスを持った蚊に刺されることで感染し、重症の場合は命を落とすこともある。健康な暮らしが脅かされる日常は、日本のすぐ隣で起きていた。

台湾・高雄では3年前、5000人を超える感染爆発に見舞われた。蚊は100円玉ほどの水溜りさえあれば、そこに卵を産み付ける。蚊を発見したら、市は殺虫剤を散布。拒否すれば最大120万円の罰金が科せられる。

人口密度が世界第2位のシンガポールも、デング熱の恐怖に怯えている。ひとたび発症すると瞬く間に被害が拡大。3年前には感染者1万5000人を超える事態に陥った。現在、年間55億円を投じ、蚊の対策に取り組んでいる。

日本でも、多様なウイルスを媒介する能力を持つ「ヒトスジシマカ」が、温暖化の影響で増加傾向にある。もし日本に上陸してしまったら…。最悪のケースをシミュレーションする。

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サハラ砂漠〜消え行く世界遺産の町

 アフリカ大陸に広がるサハラ砂漠。日本列島が26も入ってしまう砂の海を俳優、鈴木亮平が訪ねた。
目指したのは、世界遺産の町・シンゲッティ。現地の言葉で、馬の泉を意味する。かつてはキャラバン隊のオアシスだった。その世界遺産の町が、温暖化によって、存亡の危機に晒されている。

今のシンゲッティに、緑は殆どない。砂だけが町を食い尽くすかのように、押し寄せていた。すでに一部は、砂の下だ。風が砂を運び、じりじりと建物に迫っていた。

砂が近づいてきたのは、30年ほど前からだという。最大の理由は、降水量の激減。かつて幅50メートルの川が流れ、沢山の樹木が生い茂っていたというが、1970年代に降水量が減り始めると、川は干上がり、瞬く間に砂漠化が進んだ。そして…以前、はるか彼方にあった砂丘が、いまや津波のように町を襲い始めている。

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ゾウVS人間〜ケニアの大地で起きている現実

 ケニアの大地で、人間とゾウがせめぎ合っている。地上最大のほ乳類、アフリカゾウ。動物の中でも極めて賢いといわれるゾウは、性格も大人しい。そのゾウたちが、人間を襲い始めているという。

ケニア・テンバ村では、ゾウたちが畑を狙って、間近まで迫ってくる。農作物を奪われる村人にとっては死活問題だ。だが、ゾウを撃ち殺すことは禁じられている。村人たちは、命がけでゾウを追い払うしかない。

なぜ、ゾウは畑を襲うのか。元来が乾燥地帯だったケニア東海岸の一部は、温暖化の影響で、ますます乾燥が加速。ゾウたちの食料が不足したからだ。中には、人間を殺すまでに凶暴化したゾウも何頭かいるという。

ケニアでは凶暴化し、人間を襲うようになったゾウを、食料が豊富なサバンナへ移送するプロジェクトを推し進めている。番組はその一部始終を目撃した。

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アメリカのツケ!?〜竜巻の異常発生

 地球温暖化に端を発する天変地異は、超大国・アメリカをも脅かし始めている。京都議定書を拒んだアメリカ。そこには、大企業や権益団体の影がちらついている。長野智子の旅はアメリカの欺瞞を知るところから始まった。

ジェームズ・ハンセン氏は、1980年代から、地球温暖化の危険性を政府に訴えてきたが、目に見えぬ圧力で、証言を改ざんされたという。

地球温暖化に対して、見て見ぬふりを決め込んできたアメリカ。そのアメリカに、天罰が下ろうとしている。
「竜巻」。アメリカは世界有数の竜巻発生国。特に今年は異常発生している。5月までで例年の1年分に迫り、死者120人を数えた。通常は発生しない冬にも多くの竜巻が起きた。番組ではトルネード・チェイサー(竜巻追跡人)に密着取材。同行した長野智子を待ち受けていたのは、一触即発の恐怖と、あまりにも悲惨な爪痕だった。

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賞味期限〜食料自給率39%の裏側

  早朝、町中を転々としたトラックは積荷を乗せて、ある工場へ入って行った。荷台には幾つものボックス。そこから現れたのは、大量のパン、野菜、フルーツ…。いずれも、まだ新しい。総てスーパーなどから毎日廃棄される食料だ。

食生活の大半を輸入食料に頼る日本で、1年間に廃棄される食料は1900万トン。廃棄の目安となるのが「賞味期限」。その期限は、細菌の増加量や、味、見た目、匂いなどから算出される。そして、食料の大量廃棄と賞味期限の短さとは、密接に関係しているという。そこにはメーカーの思惑も隠れているというのだ。

そしてもうひとつが、規格外の農作物が廃棄されている問題。番組では、広島県のアスパラ農家を取材した。店頭に並ぶアスパラはすべて等級ごとに仕分けされ、形やサイズが均一に揃っている。流通の利便性、パッケージの統一など、物流側から考えられたシステムと言っていい。そしてその裏で、大量の"おいしい"野菜が廃棄されている。

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日本の森から地球を救う〜安田現場

 日本の森が、危機に瀕している地球と人類を救う。そう提言するのは、環境考古学者・安田喜憲教授。古舘伊知郎が、安田教授の調査現場である十和田湖のブナ林を訪ねた。

安田教授が調査しているのは「年縞」。年縞とは沼や湖に堆積したシマ模様の地層のこと。この年縞から、文明の栄枯盛衰は、気候変動と森林破壊が深く関わっていると指摘する。

欧米諸国は、森林破壊型の「畑作牧畜文明」だという。家畜の放牧のために、森林を伐採。土地が痩せれば、また次ぎ森を切り開く。これが繰り返されて、瞬く間に森は消えていった。今、我々が目にするヨーロッパの森のほとんどは、植林によって再生されたのである。

一方、日本は、循環型の「稲作漁労文明」。「森」から流れ出た水を田んぼに引き、そこで収穫された米を食べて暮らす。栄養分を含んだ水は海へと流れこみ、海藻の森をつくり、海の恵みを育む。この循環によって日本人の暮らしは支えられた。だからこそ、私たちは森を大切にしてきた。結果、日本の国土には、まだおよそ7割の森が残されているのだ。

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アメリカのバイオ燃料

 アメリカ中西部アイオワ州の肥沃な農地が、大きく変貌しつつある。降って湧いた温暖化対策がトウモロコシの価格を高騰させているのだ。引き金は、ブッシュ大統領が掲げたバイオ燃料増産計画。政府の発表後、次々とバイオ燃料の生産工場が誕生。稼働する160余りの工場に加え建設中のモノも多い。

農家はまるでバブル景気。家畜の飼料だったトウモロコシが、今はバイオ燃料に化けるのだ。価格はこの2年間で3倍に跳ね上がった。

トウモロコシ・マネーは娯楽施設のなかったこの町に、カジノを作った。農作業を終え、嬉々としてギャンブルに興じる人々。のどかだった田舎町は、欲望に踊っている。

国策として、バイオ燃料に取り組むアメリカ。遠い国の食糧危機などどこ吹く風で、トウモロコシが燃料に変わる。今年は、全米で生産されるトウモロコシの実に4分の1が、バイオ燃料に精製されるという。

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スワジランドのバイオ燃料〜アフリカの収奪

  EU諸国で注目されているバイオ・ディーゼル。バイオ・ディーゼルの原料は「ジャトロファ」という植物。種から油を抽出する。ヨーロッパでは、ジャトロファが石油メジャーを潤している。

問題なのは、ジャトロファのプランテーションが進められているのが、アフリカの貧しい国々だということ。アフリカ南部の貧しい国スワジランドも、例外ではない。バイオは金になる…。食糧危機と貧困に喘ぐこの国で、そんなウワサがささやかれている。

スワジランドでは、イギリスの石油メジャーの子会社が、「苗木は無料。手間がかからないし、日本車だって買える…」と貧しい農家を勧誘し、契約を増やし続けている。だが、このジャトロファが金を生むのは、2年後に実をつけてから。それまで農家に収入はない。さらに、読めない英語の契約書にサインさせ農民を縛り付けている。

現金欲しさに、畑だった土地が、有毒で食べられないジャトロファに取って代わられていく。アフリカがまた収奪されていく。

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グリーンランド〜人類の“ティッピング・ポイント”

 もし、地球の温度があと5度上がると、氷の大地は一気に海に流れ込んでしまうと予測されている。その瞬間は、ティッピング・ポイント(臨界点)と呼ばれている。

世界最大の島であるグリーンランドは、大地の8割が厚い氷に覆われている。最も厚いところで3千メートルにも達する。いま世界中の科学者たちが、この地域に注意を払っている。もしもグリーンランドの氷が総て溶ければ、世界の海面は7メートルも上昇すると言われているからだ。

そして、地球温暖化は氷が溶けるスピードを加速させている。氷の大地には、いま、無数の青い湖が生まれていた。湖からは激流が流れ出し、氷の大地の上をさまよっていた。溶け出した激流は、氷の大地の下に流れ込んでいく。

グリーンランド…人類の未来は、白く美しい、この氷の大地を守ることが出来るかどうか…。その一点にかかっていると言っても決して過言ではないのだ

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