2005/09/28 特別寄稿 石丸謙二郎 「超人になりたかった僕」


清々しく気持よく晴れた空。グランドには青々と茂る緑の芝生が美しい。
なんと爽やかな日なんだろう!…そう、あの事件までは…。

あれは、巌流島で行われた「アストロ球団 対 ロッテ」の試合、撮影初日。
某野球グランドにスタッフやアストロ超人たちが続々と現れた。

リアルタイムで原作を読み「アストロ魂」に心躍らせていた僕は、この撮影が心のそこから楽しみだっ た。ロッテのユニホームに着替え、金田監督のメイクをしてもらい、普段より気持ちもきっと高揚して いたはずだ。そして、とんでもなく気持ちのよいロケーション。
こんなところで撮影の待ち時間にじっとしてるなんて耐えられない!

僕は撮影の邪魔にならない外野の芝生の上を走り始めた。
初夏の風は気持ちよく、めったに踏めない野球グランドの芝生の上を走る爽快感が、高まる興奮にさら に拍車をかけた。
「俺はこれから超人たちと戦うんだ!」「アストロ球団と戦うんだ!」気持ちはどんどん高ぶっていく
…。

…そして悪魔がささやいた「?!もしかしたら『俺』も超人か!?」

アストロ超人たちは昭和29年生まれ。僕は28年生まれ。近い!同年代だ!
俺も超人になれるかもしれない!!いや、俺は超人だ!きっと!
「よーし、飛んでやろう!大きく跳んでやろう!」
俺は思ったまま青々と茂った芝生の上 に身を投げた。イメージは完璧。綺麗に飛び込み前転をしている はずだった。

「ブォキィ!!!!!!!!!!!!!」

いやな音がした。
あれっ?イメージと違う。どうしたんだ?何かがおかしい。何が起こったんだ?
…徐々に自分が置かれた状況を理解し始め、愕然とした。右肩がおかしい、激痛が走る。折れたのか?
はずれたのか?

そーっと、立ち上がってみる。やはりおかしい。僕は痛みが激しくなる前にスタッフに頼んだ「すみま せん、肩をやっちゃったみたいです。痛めたみたい…。救急車呼んでもらえますか?」

今思い返せば、あの時なぜ「俺も超人かもしれない」などと思ったんだろう。
でも確かにあの時は、本当に自分も超人になれたような気がしていた。芝生の上を超人・石丸が綺麗に 飛んでいるはずだった。

救急車で運ばれた先の病院での診察は「右肩靭帯断絶による脱臼」。

撮影日に起こったとはいえ、待ち時間に自分で起こした自損事故。監督・カメラマンをはじめスタッフ の皆様には本当に迷惑をかけた。もちろん出演者、アストロ超人たちにも心配をかけた。本当に申し訳 ない。ぎりぎりのスケジュールが、僕の怪我でまた組み直し…本当に申し訳ない。

幸い僕の演じた金田監督は左利き。脱臼した右手をうまくカバーしながら撮影を続けてもらった。

あれから約3ヶ月。
スタッフ・出演者の皆様。先日、ようやく肩に入れた金属がとれました。
あとは以前のように動かせるようリハビリとトレーニングの日々です。

僕は超人になりたかった。なれる気がした。そして、超人になれなかった。

あの日、きっとあのグランドには「悪魔」がいたんだ。
そして、僕は学んだ《グランドの芝生は見た目よりも硬い》と。

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