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reported by  
  宮嶋泰子
シンクロ競技3日目はソロです。
午前中からテクニカルルーティーンが行われ、午後はフリールーティーンの予選が行われました。

ソロというのはその人の力量がそのまま出てしまうものです。
ですから、見ているものにとっては魅力的な演技と、つまらない演技がはっきりしているものと言うことが出来るかもしれません。

シンクロ取材暦○○年、そんな生意気なことを言いながらも、実は今回ソロの難しさをつくづくと知りました。

最初のテクニカルルーティーン。ソロでは6つに規定要素をきっちりこなさなくてはなりません。
これまで日本のソリストといえば立花美哉さんでしたが、その後を受けて登場したのが、鈴木絵美子選手。天才的な器用さでどんな技も軽くこなしてしまうといわれる美脚の持ち主です。
とは言っても、初めてソリストとして世界に舞台に立つ緊張はいかほどだったでしょう。

実は鈴木選手は「自分でもなぜかわからない、わかっていたら、あんなミスをしなかった。」という大失敗をしてしまったのです。
 
鈴木選手初めてソロで世界の舞台へ
演技中に自分のミスには気づいていた鈴木選手

オーロラスピンという技術があるのですが、この技をしっかりこなすために、鈴木選手は、終わりの位置を壁の見えるところと目標物を決めていました。ところがこの日、鈴木選手なぜかこの技をいつもと反対の方向から始めてしまったのです。終わる場所をしっかり頭の中に入れていた鈴木選手はいつもより半周多く回転してしまったのです。

もちろん演技中自分でも失敗したことはわかったといいます。その動揺は後の演技にも響きました。

演技後、金子リームリーダーも記者がつめかけるミックスゾーンにやってきて、「2点の減点ですね。」といささか沈痛な面持ち。

金子正子チームリーダーもやってきて・・・

しかし、ルールブックを紐解くと、回転が足りないものは減点と書いてありますが、多すぎるものに関しては何も処分が書かれていないことがわかりました。シンクロナイズドスイミングでは、ルールブックに明記されていない場合は、その試合のレフェリーの判断に任されていることになっています。結局その後協議が行われ、レフェリー判断で鈴木選手の減点はないことになったのです。

鈴木選手の得点
EX:9.5  8.8  9.7  9.4  9.7
OI:9.7  9.7  9.6  9.6  9.7


結果スペインのメンガルとは0.5ポイント差で4位をキープします。

規定要素をしっかりこなせなかったのは鈴木選手だけではありませんでした。
あのソロの女王、ヴィルジニ・デデューでさえも大変な失敗をしてしまったのです。

女王デデュー登場
デデューにもミスが・・・
あっ!倒れた

ソロテクニカルの最後の課題の技術要素のスラストスピン。
スラストという技で一度頂点を作って倒立をしてから、360度のスピンをするする技ですが、倒立をするときに何と、斜めに倒れてしまったのです。普通その状態からスピンをするとすべてが斜めになってしまうのですが、デデューは無理やり何とかスピンに持ち込みました。しかし、この技を完璧にこなすことが出来なかったことは事実です。
この技術はデデューが不得意を自認していて、この一年一番力を入れて練習してきたものだったのです。

其の落胆ぶりたるや、声をかけるのもはばかれるくらいでした。
すぐにミックスゾーンにはやってこず、一度控え室にもどって気を取り直してからみんなの前に姿を現してたほどです。

失意のインタビュー

ヴィルジニ・デデューのことをもっともよく知る人はこう打ち明けてくれました。「実はこの大会でみんなをあっと言わせるようなことをフリールーティーンでやろうと思っていたんだ。でもそれはとっても危険を伴うものなので、テクニカルでしっかりリードして、その技に挑みたがっていたんだ。この失敗はかなりのプレッシャーになってしまったね」

昼の休憩時間、デデューは恋人の胸の中に顔をうずめて泣いていました。

デデューのテクニカルの得点です
EX:9.8  9.3  9.8  9.9  9.7
OI:10.0 9.9  9.8  9.9  9.9

ジャッジ
EX  1:米国、2:スイス、3:メキシコ、4:スペイン、5:オーストリア
OI  1:エジプト、2:カナダ、3:カザフスタン、4:スウェーデン、5オーストラリア


それぞれの選手が心に課題を抱えたまま、夕方のフリールーティーンに臨むのです。
ソロは自分との孤独な戦い。
人とあわせるのではなく、自分で自由に動き演じているように見えるものだからこそ、
その奥には実に深遠な競技の世界が存在していたのです。

17時15分から行われたフリールーティーン

鈴木選手は花の乱のテーマ曲に載せて鼓のリズムに美脚を繊細に動かし、独特のワールドを展開。

花の乱を蝶の水着で演じる
演技を終えてほっとする鈴木選手

デデューが選んだ曲は、あのビヨークのイッツ・オー・ソー・クワイエット。
演技をしながら歌っているのです。
そしてあの足技、
もう演技に釘付けでした。
デデューの動きに魅せられて、息も出来ないくらいでした。
音楽が鳴り止むと、胸が熱くなってそっと目を閉じました。
本当に素晴らしい!!!!
いくつエクスクラメーションマークをつけても足りないくらい。

すべてが計算されつくした演技・・・
演技力のすべてを出すデデュー
高い!

人生でこんな演技を見られたなんてなんて幸せなんでしょう。
あっ、申し添えておきますと、私は仕事の都合でミックスゾーンに詰めていたので、
デデューの演技はテレビのモニターで見ておりました!
すぐ横で生の演技が見られるというのに・・・・
悲しい。
それでもこの感動ですからね。
皆さん、ソロの決勝は是非是非、テレビの前でかぶりつきでご覧くださいませ。

テクニカルとフリールーティーン予選を終了した段階で、デデューがロシアのイシェンコに0.584の差をつけてリード。
鈴木絵美子選手はメンゲル選手に0.734の差をつけられて4位。

ここでフリーの得点をご紹介しておきましょう。
デデュー
TM  9.9  9.9  10.0  9.8  10.0
AI 9.9  10.0 10.0 10.0  10.0
 
鈴木絵美子
TM  9.6  9.6  9.7  9.6  9.6
AI 9.7  9.7  9.7  9.7  9.5


シンクロの楽しみ方をまた知った一日でした。

ソロの面白さを知りました
    
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