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7月19日--チームのフリールーティーンの決勝です。
Reported by 宮嶋泰子

7月13日から始まった世界水泳のシンクロもいよいよ最後、チームのフリールーティーンの決勝です。

すでに行われたチームテクニカルルーティーンでは、日本はオリンピック世界水泳通じて初めて、1位という成績でした。

このトップの成績を持ち点にして、フリーを戦うわけです。
日本は持ち点でロシアに0.167のリード。

チームのテクニカルにはメンバーに入っていなかった立花さんが、フリーになってはいります。

立花さんはこれまでソロ、デュエットをこなしてきたことで、どうしてもこのチームのフリールーティーンの練習に参加する時間が制限されてきました。
また武田さんもデュエット練習に追われて、同様に思うようにチーム練習に参加できませんでした。
チームは練習でびっしりあわせることが求められるので、普段から同じメンバーで練習することが重要です。
なかなか一緒に練習できないことから、本番で思わぬ勘違いをしてミスを起こしてしまったのが、16日に行われたフリールーティーンの予選でした。一列になる場面で、一瞬武田さんが入る場所がなくなり、取り残されると言う場面があったのです。

私のような素人でもわかったので、本当にどきりとしました。
そんなこともあって、朝から練習ではいかに、みんなであわせるかという練習に終始しました。

いよいよ本番、テーマはカジノ。
ルーレットやトランプ。カジノのさまざまなイメージを8人で作り上げようと言うものです。
おもちゃ箱をひっくり返したような楽しいルーティーンです。
何かメッセージを伝えると言うものではありませんが、見ていてとにかくぽかんと口を開けながら、ニヤニヤしてしまう、そんな楽しさがある構成です。

中盤、輪になってルーレットの中をダイスが回るイメージのところで、ほかの人の胴体の上をするりとすり抜けていく演技があるのですが、そこで何と引っかかってしまうという失敗がありました。本番でこんなところを失敗するなんて。これは大きな見せ場だっただけに目立ってしまいました。

「シンクロはほとんどはじめから順位が決まっている。」「失敗なんてないんでしょう」とよくきかれますが、とんでもない。

緊張や会場の雰囲気などで失敗することがよくあるのです。
シドニー五輪のときに、デュエットで立花さんの脚と武田さんの脚がぶつかってしまうと言う失敗がありましたが、あれも普段では考えられないミスでした。
ぎりぎりのところで構成されている演技は、ちょっとした心理的な変化や、位置の取り方が違ったりすすることで、いつもはありえないミスを犯すことがあるのですね。

演技後井村コーチは「まだまだ未熟なところがあるということですね。さあ、出直しです。」と潔く締めくくってくれました。

日本の得点は以下の通りでした。

T.M. 9.8 9.8 9.9 9.8 9.8
A.I. 9.9 9.8 9.9 9.9 9.8
98.333

このフリールーティーンの得点の50%とテクニカルルーティーンの得点45.167を加算したものが得点となります

98.334が総合得点。

日本の演技に続き出てきたのがロシアです。
ロシアはテクニカルで日本に先を越され、闘争心に火がついたようです。
エリチィンを女性にしたような雰囲気のポクロフスカヤ総監督が、全身で怒鳴りながら指導をしていました。

そうそう、ロシアの演技は5月下旬のヨーロッパカップの時からさらに手を加えて、難度を高くしたものにしていました。
大きく変えた部分は、リフトからの飛び上がりのパートです。
最近のチーム演技の傾向として、派手にバンバン飛び出す技を多用するということがあるようです。
アウトドアーではかなり派手に水しぶきがあがって映えますからね。
アテネ五輪もプールはアウトドアーとのこと。きっとこの傾向はしばらくは続きそうです。

さて、序盤、水の中から脚から飛び出した一人の手が次の人の脚をつかみ、二人で虹を連想させるような見事なブリッジをつくって見せたときには会場は大きな拍手に包まれました。飛び上がりはパワフルであるケースがほとんどですが、ロシアの場合は、繊細ささえ感じさせる美しさがそこに加味されていました。

シドニー五輪のデュエットで金メダルを取ったブルスニキナとキセロワが、チームの柱となって演技をしている姿には感心せられるものがあります。

3年のブランクの後復帰したものの、ヨーロッパカップで20歳の若手に破れたことから、ロシア代表としてデュエットでの出場はなりませんでしたが、チームの柱となって、しっかり演技をしている28歳のキセロワと、24歳のブルスニキナ。二人の心境は、かなり複雑でしょう。金メダルの栄光を捨て、チームの一員としてみんなをまとめる二人を見ていると、シンクロに対する愛情と、自らの決断を貫く姿が潔くさえ感じられました。

ロシアの関係者に聞いてみたところ、アテネまで、彼らが続ける可能性は50%とのこと。アテネまでチームの一員としてがんばり、さらには、チャンスがあればデュエットの座も狙ってくるのかもしれません。ポリャンスカヤコーチやポクロフスカヤコーチはそれを望んでいるかもしれません。

ポクロフスカヤコーチ

話がそれました。
ちょっと乱れたところがあったものの、ロシアは完成された演技で高得点を獲得。
テクニカルルーティーンで日本が持っていたリードも逆転し、見事優勝の座を手にしました。

心配げにロシアの演技を見る日本の選手たち

ロシアの得点をご紹介しておきましょう。

T.M. 9.9 9.9 9.8 10 9.9
A.I. 10 9.9 10 10 10
99.500

このフリールーティーンの得点の50%とテクニカルルーティーンの得点49.000を足したものが

98.750

結局ロシアは0.416 日本をリードして、優勝を手にしたのです。 


こうやって書いていると、デュエットに精力を注ぎ、チーム練習がおろそかになってしまった日本のベテランと、デュエットの代表を逃し、チームの柱となったロシアのベテランとの存在がそれぞれの明暗を分けることになったような気もします。

立花・武田はチームに専念せよと言うわけにも行かず、日本は難しい状態を、アテネまで持ち越すことになりそうです。

では最後にいつものように、審判構成をご紹介しておきましょう。

※審判構成

T.M.

1審エジプト 2審カナダ 3審日本 4審ロシア 5審イタリア

A.I.

1審米国

2審オーストリア 3審オーストラリア 4審スイス 5審スウェーデン

これで 世界水泳シンクロナイズドスイミングは終了。
いよいよ競泳が始まります。
炎天下のプールから屋内プールへ。
実況するアナウンサーたちも、ほっと一息です・・・・・といいたいところですが、午前中は予選、午後は決勝と、休む間もない超ハードスケジュールの日々が続きます。

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