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番外(2)   『日刊ゲンダイ映画コラム2004』 (2005年新春特別号)

平日のお父さんたち。
食パンを片手に朝刊を広げ、帰宅後は、ビールを片手にニュース番組を見る。
『ニュースの天才』
1998年に実際に起きた、アメリカの雑誌記事捏造事件を映画化した作品。大衆の期待に追い込まれた若手人気ジャーナリストが選択した手法は、自ら「ニュース」を作ることだった…。

ニュースの中で大雨を告げる天気予報に、ため息をつく。晴れの天気を作り出すことだけは、誰にも出来ない。

休日のお父さんたち。
…と言っても、結局、なかなか休めない。
「ねえねえ、お父さん、何処か行こうよぅ!」
行き先を考えあぐねたら、断然、子どもたちをこの映画館へ連れて行って欲しい。
『ポーラー・エクスプレス』
クリスマスイブの夜。少年の家の前に、巨大な汽車が到着する。「行き先は北極星」と告げる車掌に誘われて、恐る恐る乗り込んだ少年は…。

子どもを遊園地に連れて行き、結局は自分が一番はしゃいでしまった時のような。鑑賞後はきっと、クリスマスを子どもたちのために「楽しませる」のではなく、自ら「楽しむ」気持ちになれるはず。

そして、ごく、たまに。
お父さんたちだって、一人になりたい時があるらしい。
『岸辺のふたり』
8分間の無声アニメーション。幼い娘を置いて、ボートで川へと漕ぎ出したまま戻ることはなかった父。遠い日の父を求めて、娘は父と最後に別れた場所である岸辺を訪れ続ける。

仕事のノルマや決算報告のこと、全てを忘れて。宴会シーズンの只中、白み始めた朝の路上で、ひとり。「〆のラーメン」のせいだけではないだろう。いつの間にかささくれ立っていた心にじわりと優しく染み渡る、胃薬のような映画だ。

※本文は、2005年の『日刊ゲンダイ・新春特別号』に、アナウンサーお勧めのお正月映画として掲載されました。
   
 
    
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