前の記事を読む 次の記事を読む  

 
 

番外(1)  『日刊ゲンダイ映画コラム2003』  (2004年新春特別号)

 涙は女の○○である。
 愛情?
 武器?
2002年1月。アフガニスタン復興支援国際会議へのNGO参加問題をめぐり、当時外相だった田中真紀子氏が涙ながらに正当性を訴えたことを受けて、小泉首相はこう言った。「涙は女の最大の武器だからね」
 
『涙女』という映画がある。葬儀の席で故人を偲び、涙を流すことを職とする「哭き女」。列席者の悲しみを一手に引き受けて泣く、いわば涙の代理人だ。この職業はアジアを始め、現在も世界各地に根付いているという。
北京に不法滞在している主人公は、返すあてのない夫の借金のためにした嘘泣きをきっかけに「哭き女」としての生活を送ることになる。
彼女にとって、涙は女のビジネスだ。生きるための涙に潜んだ、したたかさと逞しさ。ほんの少しの可笑しさと、言いようのない悲しさ。
涙は誰のものだろう。人間の「泣き声」は、決して「鳴き声」にはならないことを思い知る映画だ。

もう一本は、お馴染み『ラスト サムライ』。武士の妻、たかを演じた小雪。果たして、彼女の流す涙は…。

※本文は、2004年の『日刊ゲンダイ・新春特別号』に、アナウンサーお勧めのお正月映画として掲載されました。
   
 
    
前の記事を読む 次の記事を読む