金曜日の夕方。
討論番組の収録が終わって、いつものように車輛口へと向かう。
ゲストの政治家を乗せた、磨かれた車を見送った。
隣に立っていた上司が、ふいに言う。
「村上って、まだ31歳だったんだ」
番組内で、田原総一朗さんに問われた時のことだ。
各党の論客が激論を交わす。マニフェスト、消費増税、政治と金。
「ねえ、聞いていて、どう?」
「31歳の自分の生活と重ねてみて…」恐る恐る切り出した。
「まだというか、もう31歳ですよ」
曖昧に笑うと、上司が重ねた。
「そうかぁ、ロストジェネレイションかぁ」
ロストジェネレイション。
バブル崩壊後の経済停滞期に少年期を過ごした、1970〜1986年生まれの団塊ジュニア世代。終身雇用体系が崩れ始めた就職氷河期に、世の中に出た。
かつて、朝日新聞が「さまよう世代」と題し、特集を組んでいた。
ひきこもり、ニート。呪文を唱えるように、専門家が分析する。
モラトリアム。
法案の話ではない。
社会的な義務や責任を課せられないでいる、猶予期間。
ちょうど、20代前半のころ。
最小不幸社会。
政策の話でもない。
戦争も、安保闘争も、バブルも知らない。
そんな世代が憂える、不幸とは。
今だって、何かを掴んだとは言い切れないけれど。
掴もうと手を伸ばしていた頃を、鮮烈に思い出した。
零れ落ちたものたちが、このフィルムには刻まれている。 |