富と名声を以って成功とするならば。
それが大半の人たちにとって至難であることを、歳と共に悟るのが常だ。
挑戦して、現実を見て、別の道へ。
それは転換なのか、脱落なのか。
リップスとロブは、同じ道を追い続けた。気付けば50代になっていた。
擦り切れた革のライダースジャケット。
変わらぬロングヘアーと、薄くなってきた後頭部。
寝袋持参の欧州ツアー。客席4人のパブでの演奏。ギャラ代わりの夕食。
借金までしてレコーディングしたCD。
売込み先のレコード会社からの、同情と拒絶。
「なぜこんなにも観客が少ない中でプレイしているんだ?」
ライブで問われたリップスは、真面目な顔で応える。
「それを20年以上考え続けているんだ」
真っ直ぐさに胸打たれる。
だが、同時に思う。
生活は?家のローンは?彼らにとって、守るべきは自分の気持ちだけ?
時代に身を寄せず、我が道を行く。
ならば、手を携えて、誰と?
映画のサブタイトルは、「夢を諦めきれない男たち」。
諦めないのではなく、諦め“きれ”ない男たち。
そこに横たわる歳月。彼ら曰く「20年以上」。
傍に佇むのは、二人の家族。愛想を尽かしつつも、その手は離さない。
全力だった。そして周りも。
満員の球場で、客席4人のパブで。いつも、血眼で演奏していた。
息子とのバドミントン。子ども相手に加減はしなかった。
そんな調子だから。
ゴジラの広告に、「ゴジラだ!」と邪気なく叫ぶのは自然なことだった。
彼らは売れなかった。
では、彼らは間違えていたのか?
「誰でも歳を取る。腹が出て顔がたるみ、時間がなくなる。だから今やるしかない」
ああそうか。
彼らは売らなかったのだ。
へヴィ・メタルに明るくない私には、おこがましいけれど。
今日だけは、アンヴィルに甘えて。
胸ぐらをぐわりと掴むように、強く、近く、自分に問いたい。
魂は売らないって、決めたんだろ? |