今回ご紹介するのは、
第81回アカデミー賞で、短編アニメーション賞を受賞した作品です。
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©ROBOT
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人生が長いのか短いのかなんて、
この12分間を前に、意味をなさない気がします。
まるで「積み木」のような家。
海面が、どんどん上がってくるので、
家を上へ上へと建て増し続けてきました。
そんな家に住んでいるおじいさんは、
ある日、お気に入りのパイプを落としてしまったことから、海の中にもぐります。
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妻との別れ。
娘の結婚式。
新しい家。
時間を遡り、
深く、辿る。
重ねた積み木は、おじいさんの生涯?
横に並べられる煉瓦は、繰り返される日々?
せりあがる海面は、地球の温暖化?
象徴化したり、具現化したり、何かと分析したところで、
答えなど出るはずもなく。
忘れていたあの頃。
とか、
忘れられないあの思い。
とか。
あの―。
魔法の指示語は微塵の計算もなく、平易な軽率さもなく、
観る者一人ずつの、あのシーンを呼び覚まします。
あ、の。
二文字のインクタンク。
ふるふると揺れながら、水彩タッチの世界を織り上げます。
とはいえ。
夢の世界ではなく、
ささやかで、時に辻褄が合わず、
そのくせ重い腰を上げられていないことも承知で。
現実のざわめき。
そんな日々。
誰と出会いましたか。
誰と別れましたか。
雨が降ったり、お腹が空いたり、好いたり、諍ったり。
時間は身の上を淡々と、ただただ流れてゆく。
深く、巡る。
人生は、帰り道だと思うのです。
いや、帰る道かな。
あの場所に。
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