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Vol.23 2月5日 『スーパーサイズ・ミー』

アメリカで最も食べられている野菜は、「フライドポテト」!?(パンフレットより)
強引に和訳すると、野菜の天ぷらということでしょうか…。あ、我が家では、じゃがいもの天ぷら、揚げますよ(なぜか、サツマイモではないのです)。
今回は、本年度アカデミー賞の長編ドキュメンタリー映画部門でノミネートされた『スーパーサイズ・ミー』をご紹介します。

ルール1:某大手ファストフード店内に存在するものしかオーダーしてはならない。
ルール2:「スーパーサイズ」を勧められたら、断らない。
ルール3:全てのメニューを必ず一度は食べる。
ルール4:三食残さず食べなくてはならない。


一ヶ月間、ファストフードだけを食べ続けたらどうなるだろうか?
近年アメリカで深刻化している肥満症と食生活との因果関係に迫るべく、モーガン・スパーロック監督自らが被験者となって、フィルムを回す。上映されるや世界各国で話題となった、異色のドキュメンタリーである。

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○○だけを、ずっと食べ続ける。

その不自然さに違和感を抱く一方で、身につまされる思いがする。
かつて、アイスクリームが主食だったことのある私にとっては。

ケーキを丸ごとホールで食べてみたい。一日中、スナック菓子を抱えてごろごろしていたい。好きな時に好きなものを食べて良いという生活は、幼い頃の憧れだった。
大学に入学して、一人暮らしを始めた(同時に、幼少時の夢が叶うはずだった)。しかし、自炊経験がなかったせいで、実生活を営む上での「食」の確保は深刻だった。アルバイトは必然的にまかないの出る飲食店に限定され、イタリアンレストランにて、茶碗の白米ならぬ、カフェオレボウルにバニラアイスクリームの日々。その結果、私の血糖値は急上昇した。
人間が本能的に好ましいと判断する味は、脂肪と甘さだという。生きていくためのエネルギーに直結しているからで、それ故、成長期の子どもたちはお菓子が大好きだそうだ。
だが、今や、十分に自己管理が出来る年齢だ。

シリアルの箱の側面には、栄養素の成分表が表示されている。
カルシウム、鉄、ビタミンB1、B2…。理想とされるのは、限りなく円に近い、均整の取れた正多角形だ。一つの成分だけが突出していても、残りが極めて不足していたらどうなるだろう。いびつな星形よりは、例え小さくまとまっていても、限りなく円形に近い方がバランスは良い。

もともと、お気に入りを見つけたらそればかりだった。ずうっと、飽きるまで。自身では気付かぬうちに、偏りは「食」だけに止まらず多岐にわたっていた。
だが、全てにおいて、バランスが大切なのだ。
突出していることは、決して悪ではない。しかし、個々の受容力の中で著しく欠ける部分が出てくると、弊害が生じる。
アイスクリームでも、白米でも、そればかりでは栄養が偏ってしまう。
好きか、嫌いか。
人の嗜好は様々だ。だが、ジャンルを越えた未知との遭遇を、新たなコラボレーションと銘打ってみてはどうだろう。
今日はファストフード、ならば、明日は和食。
ハンバーガーは必ずしも悪くない。カロリー過多が気になれば、翌日は五目雑炊を。
  
元来、甘いものに目がなく、酸っぱいものは苦手である。
それは、「甘美な夢から抜け出せず、辛酸を避けがちな」自身の縮図である気すらしてくる。現実を受け止める時、自分の面積が変形していれば、隙間に突き刺さる物事も多い。
バランス良く食べる。
バランス良く生きる。
「食」とは、生き方そのものだ。
自戒を込めて。

■作品データ/『スーパーサイズ・ミー』
監督・脚本・製作・出演:モーガン・スパーロック
撮影:スコット・アンブロジー
音楽:スティーヴ・ホロウィッツ、マイケル・バリッシュ
配給:クロックワークス ファントム・フィルム/2004/アメリカ/98分

※シネマライズほかにて公開中

『スーパーサイズ・ミー』公式HP:

http://www.supersizeme.jp/
   
 
 
    
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