- 170cm
- 福岡県福岡市
- 日本女子大学附属高等学校→
日本女子大学 - 2001年4月1日
- 蠍座
安倍政権が掲げる教育改革。
政府が提言したことの一つは、「道徳の教科化」だ。
現在、小中学校では週一回程度の「道徳の時間」が設けられている。
しかし、正式な教科ではないため、成績では評価されない。
補助教材である「心のノート」は、民主党政権時には配布が見送られたが、
今回の政権交代により、小中学生全員に配布されることになった。
ノートの現物を見たのは、『朝まで生テレビ!』の放送時。
パネリストが表紙を開くと、頁いっぱいに「この学校が好き」と記されている。
道徳が教科化されると、副読本ではなく、検定済みの教科書が使われる。
成績の評価については、現段階で文科相は「なじまない」と明言している。
方策への賛否が問われる中、はて―。
小学3年生の時。
担任の先生は、「優勝カード」と呼ばれる手製のカードを生徒に配っていた。
約5×5cmの色画用紙の中央に、名入りの検印がどんと押してある。
いいことをしたら、1枚。
すごくいいことをしたら、2枚。
悪いことをしたら、取り上げられる。
もっと悪いことをしたら、もっと取り上げられる。
授業中、私たちはこぞって挙手し、
放課後も、大げさに掃除をした。
テストも学級会も、「いいこと」を目標に。
優勝カードが欲しかったから。
いつの間にか、カードを集めることが目的化していた。
宿題を見せる代わりに、友達からこっそりもらう生徒もいた。
ところで、「優勝」とは、何に勝つためのものだろう。
ある日、登校すると、
自分の机の上に、びりびりに破られたカードが数枚置かれていた。
「どうしたの?」と女子たちが駆け寄って来る。
「わぁ、ひどーい」
いつも大声で騒ぎ、計算問題を解くのが遅く、
カードを1枚も持っていない男子の名前がささやかれた。
「もしかして、○○君じゃない?」
カードを破ったのは誰か。
小さな事件に、クラスは紛糾する。
制度を破りたかったのは誰か。
悲しくはなく、むしろ急に恥ずかしくなった。
この学校が好き?
あの当時、「心のノート」が存在したら。
疑問符を打つ勇気は、あっただろうか。
補助教材「心のノート」(著作権所有・文部科学省)