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9月1日 プレイバック・報道ステーション企画
『こんなに安く簡単に校庭が芝生になるなんて驚き!』

テレビ朝日に勤めるようになってから既に30年以上たつのですが、昨年の夏から今年の夏まで、この1年間はかつてない忙しさだったように思います。

実際仕事が多くて忙しかったのか、それとも体力が落ちて、仕事をこなせなくなって忙しく感じただけなか、いささか悩むところではあります。これまで同様、番組を作り続けながら、増え続けるさまざまな用事を処理していかなくてはいけないのも事実です。とはいえ、体はひとつです。忙しさの原因はおそらくこのあたりにあるのでしょう。

制作した番組をこのウェブでこれまではちゃんとご紹介していたのですが、それもとんとご無沙汰でした。世界水泳も終わって、ようやく一息入れることができるようになった今、まとめて作業をすることにいたします。不精をお許しください。

前回の北京オリンピック、シンクロのまとめに続いて、今回お送りするのは、去年の11月28日に放送した「校庭の芝生化」の特集です。
うちの学校も芝生にしたいと大反響の企画でした。
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プレイバック・報道ステーション企画
『こんなに安く簡単に校庭が芝生になるなんて驚き!』

  

青々とした芝生の北広島町立豊平西小学校にお邪魔しました。

宮嶋泰子:「この校庭のグリーンはおいくらいでできたんでしょうか。」
校長先生:「5万円です。」

鳥取市にあるのぞみ保育園も今年芝生化をしました。

園長先生:「二ヶ月でここまで青々とするとは想像していなかったです。びっくりです。」

宮嶋泰子:「これまで日本の芝といえば、こうした張り芝を業者に頼んで植えてもらい、立ち入り禁止というのが常識でした。それが変わってきたんです。」

  

芝はお金がかかる。手入れも大変。立ち入り禁止で自由につかえない。
そんな芝の概念を打ち破るべく奮闘しているのは、ニュージーランド出身で鳥取在住のニール・スミスさんです。

ニール・スミス:「ここが私の原点です。5年前にここを芝生にしたんです。」

ニール・スミスさんが作ったグリーンフィールドは2万1千平方メートル。
ニールさんはこの広い土地をいったいどうやって芝生にしたんでしょうか。

  

今年6月、鳥取市にある保育園がニールさんの指導で芝生化をすると聞いてその様子をのぞいてみました。

ニール・スミス:「土がついている状態ですから、土を落とさないでください。このままで」

  

苗をポットから出して、直接、土に植えていきます。
上から足で踏みつけて、はい、一丁あがり。

ひとつ20円のポット苗を、一平方メートルに4.5個植えて、後は水遣りをしっかりしておきます。苗植えのコストは1平方メートル当たり100円です。

  

3週間後。
植えた苗が心もち大きくなっているように見えます。

ニール・スミス:「植えてまだ3週間しかたっていないのに、ランナーがぐっとこんな風に伸びてきているんです。」「ぐっとくっついちゃっているんですよね、隣に」

  

苗植えから1ヶ月半、園庭の8割が緑に埋め尽くされてきました。
子供たちは芝を植えた直後から縦横無人に走り回っています。
養生中につき立ち入り禁止という言葉とは無縁です。
この頃から、芝刈りの作業が始まり、太陽の光が芝にまんべんなく届くようにしていきます。


  

親子で苗植えをした6月14日から芝はぐんぐんと生長し、2ヶ月後には園庭は一面の芝で見事に覆われました。
初めて芝生の上で行われた今年9月の運動会、もちろんみんな裸足です。

園児:「走るの」「気持ちいいです」

山本克宝園長:「四つんばいになっても寝っころがっても痛くないので、とってもうれしいです。」

ニール・スミス:「子供たちの笑顔、それだけでいいです。最高!」


  

ニールさんの本業は、日本の経済リポートを英語に訳す翻訳業です。

宮嶋泰子:「何でこんなに芝のことに一生懸命になったんですか。」

ニール・スミス: 「自分がまだラグビーやりたいし、ラグビーやるなら芝生、自分がラグビーでできる場所があればいいと思ってスタートしたんです。」

宮嶋泰子:「一箇所作ったら思わぬ反響があった?」

ニール・スミス:「そうなんです。芝生化運動なんてまったく考えてもなかったんです。」

日本では芝生は高級なものとして考えられていますが、ニールさんが育ったニュージーランでは、芝生はどこにでもあるものでした。


ニールさんの子供時代

5年前、草ぼうぼうだった県の土地を借り受け、ニュージーランドの芝生のイメージを追い求めながらニールさんはグリーンフィールドを作りました。


小川をはさんで左、草ぼうぼうの状態

小川の右、芝生化したグランンド

このとき、芝生作りの技術サポートをしてくれたのが、鳥取大学農学部の中野淳一准教授でした。そこには、日本の芝の概念を変える新しい考え方がありました。

中野淳一准教授:「実は、家畜のえさになっている牧草というのはその一部が芝生として使われている。植物としてはまったく同じものですね。」

牧草を牛や羊が食んでいれば、自然に芝生になってくる。
すなわち、牧草を短く刈り込んだ状態のものが、芝生ということです。

  

もう少し詳しく知りたいと、鳥取大学の研究室にお邪魔してみました。

中野淳一准教授:「これも牧草の一種、バミューダーグラスで、これが芝生にも使われています。バミューダーグラスの中でもティフトンというものです。アメリカで古くからサッカー場に使われているティフトンというのは実は種がないんです。その代わり茎をさせばどんどん増えるんです。」

中野助教授は5年前に、日本芝草学会に論文を発表し、これを鳥取方式となずけました。

  

ニール・スミス:「これがバミューダー種のティフトンという芝です。一番の特徴は横に広がるスピードがすごく速いことです。こういう風にひとつのランナー、地下茎が伸びていきます。一週間で20センチ伸びる。成長力が強い、痛んだときからの回復が早いのがティフトンの特徴なんです。」


学校の校庭などで子供たちが遊んで芝が傷んだときでも、回復が早いのがティフトンなのです。

日本でこれまで芝といえば高麗芝が一般的でした。高麗芝は見た目にはきれいですが、傷に弱いという弱点を持っています。しかし、ティフトンは傷に強く、回復が早いので、学校の校庭などに最適だというのです。


高麗芝

ティフトン

鳥取方式の芝生作りを専門家はどのように見ているのでしょうか。
国立競技場などの芝を管理している池田省治さんは、日本でもトップクラスのグランドキーパーです。この芝を1平米作るコストは2万円。

池田省治さん:「一本の芝から何枚の葉が出ているか、成長の状況を見るんですよ。ですからプロのグランドはお金がかかるんですね。ボールの転がる速度とかも考えてプレイヤーに提供していくんです。でもそれは小学校には必要がないでしょう。」

ボールの転がるスピードを考えて作られる一平方メートル2万円の芝もあれば、鳥取方式のように1平方メートル100円でできる学校の芝があってもいい。
さまざまなグレードの芝があることが日本のスポーツを支えるといいます。


  


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