前の記事を読む 次の記事を読む  

トップ > パーソナルトップ > プロフィールトップ > エッセイバックナンバー
 
 
2月4日 がん体験者の登山



 


この夏に行われた三泊四日の奥穂高岳への登山。
同じがんの体験を持つもの同士が、一歩一歩、途中呼吸を整えながら歩きます。


 


リーダーの橋本さんが、みんなの様子を見ながら、ゆっくりゆっくり亀のように登ります。
雪渓は思った以上にハードで、途中何度も足をとられました。

「ついたついた!」
「コングラチュレーション」


 
涸沢到着(標高2300m)


ともに苦しさを乗り越えてきたもの同士が語らう夜の時間。


 


川島さん:「病院に入院していた時は、どうやって死のうかな、どこの階からおりようかなって。鬱の異常さよね。」

佐伯さん:「私はまだ子供が小学3年生だったんで一番下が。本当につらかったですね。最悪の場合はもうすぐ死んじゃうのかなあって、家中片付けたりして」

柴田さん:「私なんか、お袋言うべきことは全部言ってくれって、へそくりとさあ・・・(大笑い)」



女性の3人に一人はがんになるといわれる時代、
がんでなくなった友人や知人のことを想うセレモニーで、佐伯さんの脳裏につらい記憶がよみがえってきました。

「乳がんのときに入院した同じ部屋だった方がみんななくなってしまって、生存しているのが私だけだったんです。」




宮嶋:「今年にはいってから、アメリカ医学雑誌に興味深いリポートが次々に発表されました。特に乳がん患者の場合に、一週間に3時間から5時間の適度な運動が患者の延命や再発防止に効果があるというものです。」

定期的な運動が乳がんの発生の元となる血中エストロゲンの量をへらすことから、乳がん予防や再発防止につながるというものです。



運動の効果に加え、登山がもたらす新鮮な空気と感動、さらには、一度は死を見つめた者同士が助け合う連帯感が、体の中の免疫力を高めてくれるようです。

佐伯さんはなぜ山に登るのでしょう。


「達成感を得たいということでしょうか。それが日常生活でつらいことがあったときなんかは、あの時あれが出来たのだから、出来るかなというのはいつも感じながら、ああ、生きていてよかったなと思いますね」


癌になって知った生きる喜びがそこにありました。

*******************************************************************

【編集後記】
「ガンさまさまよ。だってこんなに素敵な体験ができるんですもの」と語ってくれた女性がいました。ガンになったおかげで、人生が限りあるものであることを知り、一瞬一瞬を大切に生きるようになり、さらに仲間を得て充実した時を過ごすことができるからと言うのです。
ガン体験者の皆さんが一歩一歩、山を目指す歩みは、自然の中で生きている自分自身を感じながら
歩を進める貴重な時間のように思えました。

緑深い山が精神に及ぼすすがすがしさ。
運動が身体に与える心地よさ。
友を得て知る自らの命の尊さ。
自分自身をじっと見つめ、生きる喜びをじわっと感じることができました。
山が与えてくれた贈り物です。
 



心も身体も洗われました

<<前のページへ
   
 
    
前の記事を読む 次の記事を読む  

トップ > パーソナルトップ > プロフィールトップ > エッセイバックナンバー