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10月23日 老人医療費削減に成功した村 〜長野県東御市 旧北御牧村〜

この建物の一角にある身体教育医学研究所が果たす役割も見逃せません。

研究所部長の岡田真平さんは、薬ではなく、日常のケアーが大切という考えを住民に浸透させるために、さまざまな仕掛けをつくりながら日々忙しく働いています。




この日は山の上の公民館に介護予防体操の出前授業に出かけていきました。
2週間に一度のこの日を楽しみにしていた人々があつまっています。

体操の後は、コタツに入って、おしんこをつまみながら楽しいおしゃべり。
ここに住んで9年になる岡田さんは、すっかり住民に溶け込んでいます。


 


老人男性:「おかげでボケ防止にちょうどようがすよ。はははは」

老人女性:「おうちであまり動かないでしょう。だからとてもいい気持ち。」

老人女性:「私、最高、94歳」

村の世話役:「高齢になっても、病院へ入らないように、施設に入らないように、それには膨大なお金がかかる。お孫さんや子どもに迷惑をかけないように健康でいようと頭の中にみんな叩き込んであるんですよ。だからみんな出てきてくれる。」


 


教えた体操を家でもやってもらおうと、村営のケーブルテレビでも一日3回、ビデオを流しました。

宮嶋:「ご覧になった村民の方からの反応はいかがですか?」<T:同上>
「ビデオであるにもかかわらず、『毎日ご苦労さん』って言われちゃうんですよ。ホントに言われますもん。(笑い)」



平成6年から10年間に、長野県の老人一人当たりの医療費は10万円近く多くなっていますが、北御牧村では一人あたり4万円少なくなっているのです。



医療、福祉、スポーツ、教育。
これまで独立して行われていたものがつながりはじめ、楽しく元気に老後を過ごせる環境が整ってきたこと、そして自分の健康は自分で守るという考えが浸透してきたことが、老人医療費の削減につながってきたのです。

この北御牧村に居を構えた水上勉さんは、85歳で亡くなるまでこのプールや温泉に通ってリハビリをおこない、「老いることで一日一日の新しい悦び」としたためています。


久堀周治郎医師:「医者は万能ではないし、医学は万能でもない」



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【編集後記】
この施設は日本財団からの補助を受けて作られたもので、すでに10年以上がたっており、地元の人々にしっかりと根付いている存在です。創設された当初からその存在は耳に入っていましたが、今回医療費を削減することに成功したという結果を踏まえてテレビでご紹介することになりました。

今から15年ほど前に、聖路加病院の日野原医師、東京大学大学院の武藤芳照教授など、医療関係者、スポーツ関係者、福祉関係者などの超一流メンバーが集ってプランニングした施設が、実際に稼動し年月を経て結果がしっかり見えてきたことで、これからの日本の施設のモデルになるのだろうと思っています。

今回ここの取材をして強く思ったことがあります。久堀周治郎医者が「医療は万能ではない」としっかり明言してくださいましたが、ドクターが医療の限界を認識していらっしゃることがいかに大切なことかということです。この考えがあるからこそ、全てが巧く回っていくのでしょう。みんなでチームを組んで互いに補完しあいながら、新しいシステムを作っていく、その素晴らしさを目の当たりにしました。

日本は官庁から末端に至るまで縦割り社会だけれど、目的が同じであれば、壁を取り除きながら補完し合っていくことが可能であることを示してくれた例でしょう。
 
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