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3月5日 スペインシンクロ大躍進の陰に
日本人コーチ藤木麻祐子の存在があった。

2001年からテレビ朝日が放送している世界水泳も今年で4回目。
舞台をオーストラリア・メルボルンに移しての大会です。
いよいよ開幕の3月18日まで2週間となりました。
大会の前半はシンクロナイズドスイミングです。
「シンクロは最初からおおよその順位が決まっているからね」とよく言われますが、
今回ははっきり言ってどんな順位になるか想像もつきません。
常にメダルを取り続けてきた日本と言えども、結果は終わってみるまでわかりません。
まさに
シンクロ戦国絵巻
各国ともに実力が接近してきた上に、今回からルールが変更になっているからです。
この世界水泳から決められた技を行うテクニカル・ルーティーンと、
自由に演技をするフリー・ルーティーンにそれぞれメダルが出されることになりました。
さらに、日本人の藤木コーチが指導しているスペイン、
今年から井村コーチが見ている中国などがメダルを狙いにきます。
どうですか、考えただけではらはらどきどき。
シンクロナイズドスイミング、本番での失敗は許されません。
シンクロがスリリングな競技であることを、きっとあなたはメルボルンの世界水泳で知ることになるのです。

ところで、昨年9月に横浜で行われたワールドカップを覚えていらっしゃいますか。
日本とスペインの大激戦。
日本のチームは演技冒頭部分で原田選手がプールに転落という大変なアクシデントに見舞われました。
みんなでカバーしあいながら、最後まで演技を終え、プールサイドでポーズを取るときにも、原田選手の脚の擦り傷から血が流れ続けていました。
得点を見てスペインに僅差で競り勝ったことを知った選手たちは涙なみだ。
あのシーンは日本のシンクロ史の一頁として後世に残るものでしょう。

ところで、日本と競り合ったスペイン。
このスペインには日本人の藤木麻祐子コーチがいるのです。
ここにご紹介するのは去年9月、ワールドカップ直前に報道ステーションで放送されたものをまとめたものです。
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わずか数年前までは5位6位に低迷していたスペイン。
しかし今大きな変化が現れているのです。

「シンクロ界の急成長株と言えばスペインです。
今では日本と2位争いをするまでになりました。
その急成長ぶりの裏には何があるんでしょうか。」



宮嶋 泰子


スペイン・シンクロ 大躍進の秘密 〜


今から4年前、スイスで行われたワールドカップ、
このとき「恐怖」と言うテーマで演じられたスペインチームの演技は今でもシンクロ関係者の間で語り草になっているほど、衝撃的なものでした。
このときの演技は、すばらしい芸術性ではあったものの、選手一人一人の技術が未熟だったことから水しぶきが多く、結果は5位でした。



2002年ワールドカップスイス大会
スペインチーム「恐怖」


そして、この演技は一人の日本人の運命を大きく変えることになるのです。

天才的な振り付けをするアナ・タレスコーチは、
スペインに欠けている技術的な面を指導してほしいと日本人の藤木麻祐子さんに声をかけたのです。



アナ・タレスコーチ


「その振り付けの面白さに、見ててこんなに、息が止まるくらいになって、
それにかかわっていけるならば私も勉強できるし、
私の能力が使えるならこのチームにかけてみたいなと思って、じゃあ行くよ。」

こうして藤木さんは2003年からバルセロナに移り住んで、
スペインチームのコーチとなり、今年で4シーズン目を迎えます。



藤木麻祐子さん 31歳


藤木さんは今から10年前のアトランタオリンピックで銅メダルを獲得した日本チームのメンバーでした。
当時から日本の脚の技術は、世界の憧れの的でした。

「日本の足ですね。
たとえばスペインの子だとここに届かないといけないとき、     こうなっちゃう、ここに届かない。
それが8人決まったときのきれいさですね。
それが日本のいい特徴。」




1996年アトランタ五輪
日本チーム銅メダル獲得


日本のシャープな動きと同調性を教えることが藤木さんに求められた仕事でした。

日本式で教えていこうと思ったものの、文化が違えば考え方も違います。
藤木さんは次々にカルチャーショックを受けることになるのです。

「シンクロの練習に向かう姿勢がまったく日本やアメリカの選手とまったく違って、たとえば時間、9時から泳ぐからと言われたら、9時に誰もプールにいないし、
9時にプールに向かう気持ちで車を運転していればいいって言う感覚だったので。」


 
 


選手たちの到着時間はばらばらです。
私たちが取材をした日も1時間遅刻の選手がいました。

藤木さんが来てからスペインチームは少しは変わったんでしょうか。

「スペイン人の性格って簡単には変わらないのよ。
マユからは時間を守って早く水の中に入るように言われるけれど、なかなか守れないの。」
「変えるのは大変。子供のときからのびのびやってきたから」
「マユは変えようとするけれど、うまくいかないの。」
「私たちにも規律はあるけれど、でも規律の形が違うの。」



天才的な振り付けをするタレスコーチは典型的なスペイン人。
余りの暑さに耐え切れなくなって本能のおもむくままに。



こんなスペインの選手たちを相手にしているのですから、
シンクロで手足の動きをあわせるのも一苦労です。

「日本風にあわせるとなると毎日細かいところをあわせたりしますよね。
同じところを何回も何回も忍耐力を使ってまたその次の日何回もやって、
それは絶対にできないことなんですね、スペイン人は。
絶対できないですね。」

とにかく日本とは感覚がまったく違うのです。
3年前にはみんなでヌードになって世界中で話題になりましたっけ。

「私たちって、ちょっといかれてるのよ!」
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