私の好きな噺家・八代目桂文楽は、戦後最大の名人と言われている。
文楽の十八番は「明烏」。
この噺の中に、源兵衛と多助が甘納豆をほおばる場面がある。
あまりに美味しそうに、上手く文楽がしゃべるものだから
「明烏」の時には売店の甘納豆が売り切れた
という逸話があるほどである。
文楽の話芸は、噺の細部にわたって緻密に作り上げ無駄を省き、
それを完璧にこなすことで、人の心をつかみ動かすものであった。
主人公・今昔亭三つ葉(国分太一)は、噺家でも二つ目。
見習いを終え紋付羽織が着られるようになったけれども、まだペーペー。
師匠の今昔亭小三文(伊東四朗)の真似ばかりで、
自分らしさを見つけ出せず伸び悩んでいる。
その三つ葉にひょんなことから「落語を、話し方を教えてほしい」と
3人の生徒ができる。
無愛想で自己紹介もまともにできない美人・十河五月(香里奈)。
大阪から引越してきたが
なかなかクラスに馴染めない少年・村林優(森永悠希)。
解説ではうまく言葉が出てこないが
普段は毒舌の元プロ野球選手・湯河原太一(松重豊)。
でこぼこで統一感なしの生徒たち。
顔を合わせれば言い争いをし、落語を覚える気もまるでなし。
それでも、現状を打破したいと三つ葉のもとに集まってくる。
さまざま問題を抱えている彼らを通して、
自分がいかに落語が好きか、
しゃべることとはどういうことか、
何が大切かを掴んでいく三つ葉。
そして、迎える今昔亭一門会。
師匠十八番の「火焔太鼓」に挑む三つ葉の出来は…。
そして「まんじゅうこわい」を発表することになった生徒たちは…。
落語というものは、だいたい噺の筋というものは大きく変わらない。
常連客などは内容だけでなく、
先人がどのようにその演目をしゃべったかも知っている。
噺の筋がわかっていて何が楽しいの?
と思う人もいるかもしれないが、
噺を生かすも殺すも演じる人の間であり、味であり、表現方法である。
下手な落語は聴けたものではないが、
名人の手にかかれば同じ演目でこうも違うのか!と舌を巻く。
下手な落語家に想いがないとは言わないが、
独りよがりになってもダメ、
自分を良く見せようと思ってしゃべってもダメ、
相手があっての話し方をしなければならない。
名人は何をどう伝えたいのか、
その真髄を的確に掴んでいるのではないかと思う。
「しゃべれどもしゃべれども」
言葉はとめどなく出てくるけれども伝わらない人もいる。
目的なくただしゃべるのでは伝わらない。
不器用でも自分の想いを言葉に託し、相手に伝える。
その大切さが、三つ葉を囲む日常の他愛もない会話の中から
じんわりと伝わってくるのである。
戦後落語の最高峰と言われた八代目文楽は、
1971年国立劇場小劇場で登場人物の名前がどうしても思い出せず
「申し訳ありません。勉強し直してまいります。」
という言葉を残し高座をおり、
そのまま二度と高座に上がることはなかった。
私のような凡人は、八代目文楽のその言葉・行動から
「何のために」しゃべるのか、
大きな想いの片鱗を窺い知るのである。 |
|
|
|
『しゃべれどもしゃべれども』
監督: 平山秀幸
原作: 佐藤多佳子
出演: 国分太一、香里奈、森永悠希、松重豊、八千草薫、伊東四朗
配給: アスミック・エース/2007/日本
※5月、シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
『しゃべれどもしゃべれども』
http://www.shaberedomo.com/ |
|
|
 |
☆近況報告☆
我が親友・安藤裕子の3rdアルバムが、バレンタインデーに発売されました。
安藤裕子は自分で作詞作曲して歌歌ってる可愛いヤツです。
人生の半分以上を共に生きてきた友が活躍している姿というものは
感慨深く嬉しいものですなぁ。
興味がわいたらアルバム聴いてくだされ。
「shabon songs」です! |