前の記事を読む 次の記事を読む  

トップ > パーソナルトップ > プロフィールトップ > エッセイバックナンバー
 
 
3月17日   ワールドプロレスリング実況三銃士の闘魂コラム#36
〜「札幌決戦」&「両国での死闘」2本立て〜


「札幌決戦」

1・30札幌。
IWGPタッグ選手権、「棚橋・中邑組対天山・永田組」。
新進気鋭の若い王者タッグに、今まで新日本を支えてきたベテランタッグがプライドを賭けて臨んだ一戦は、世代闘争が具現化した素晴らしい闘いでした。
あらためて、IWGPベルトは、プロレス界というピラミッドの頂点に光り輝く玉座であることを認識させてくれる闘いでもありました。

そして、私はこの闘いを、「会場に姿を見せない一人のプロレスラー」が発した、ある「言葉」を噛み締めながら見ていました。
そのプロレスラーとは、「柴田勝頼」であり、言葉とは「痛みの伝わるプロレス」「熱のあるリング」。

自分の理想の闘いを求め新日本を退団した柴田勝頼は、2005年の東京ドーム、メインで行われた「棚橋弘至対中邑真輔」の試合中、リポーター席の隣で試合を見ていました。
そして、その時、リポーター席に座っていた私と、このようなやり取りがありました。

吉野「柴田さん、どのような心境でこの試合を見ますか?」
柴田「新日本の未来を示す闘いなので、しっかりこの目で見させて頂きます。」

棚橋・中邑とともに新日本プロレスの未来を背負う男と言われていた柴田勝頼。
そして、棚橋・中邑に対して強烈な対抗心を持つ柴田勝頼が、いつもの喧嘩口調をわざと殊勝な言葉に変え皮肉たっぷり、対抗心を剥き出しにして答えていました。

そして、試合中に柴田勝頼はこんな言葉を口にしていました。

柴田「これが闘いだと思う?こんなの闘いじゃねえよ。」
吉野「でも二人とも必死で闘っていますよ。」
柴田「これが痛みが伝わるプロレスか!!」
吉野「・・・・。」
柴田「こんな試合じゃお客さんも納得しないだろ!!」
吉野「裁くのはファンですし、確かに、この会場にきているファンに聞いてみたいですね。」
柴田「このリングには熱がねえよ!!二人とも軽い。」


柴田勝頼の棚橋・中邑に対する抑えきれない感情を如実に示す言葉の数々。
私はこれからの新日本プロレスに起こるであろう激闘の息吹を感じていました。
「柴田は棚橋、中邑を心の底から憎み、ぶつかろうとしている。
この衝突を見てみたい。よし、そのためにはこの試合をファンに裁いてもらおう。
ファンがこの闘いを認めれば、それが柴田のジェラシーをもっと煽るはず。
認めなければ、柴田の言葉通り、これは新日本の闘いではないのだろう。」
私はそのように思い、勝者インタビューで、ファンに問い掛けました。

ファンは「棚橋弘至対中邑真輔」の一戦を大歓声で受け入れました。
そして、柴田勝頼は新日本を去りました。

あらためて1.30札幌。
「棚橋・中邑組対天山・永田組」
棚橋、中邑の踏み台にされてたまるか!!という永田裕志の執念と意地が繰り出す、魂のこもった技の数々。そして、試合後の永田裕志の大粒の涙。
普通の人間であるならば、激痛で歩くこともできないほどの腰の怪我を抱えながら必死に闘い抜く天山広吉。
そして、その二人を倒すことで、傾きかけた時代の流れを確かなものにしようと、真っ向勝負で迎え撃つ棚橋弘至と中邑真輔。
顔面を容赦なく蹴られ、頭からリングに落とされ続け、それでも必死で立ち上がる棚橋と中邑には、痛みを超える勝利への執念と、時代を切り開かんとする、熱い想いが見てとれました。

私にはそこに柴田勝頼の言う、「痛みの伝わるプロレス」「熱のあるリング」があるように見えました。

柴田勝頼がプロレスラーで在り続ける限り、棚橋弘至、中邑真輔との闘いは続き、その闘いはプロレス復興につながる闘いであると思います。
柴田勝頼が新日本を退団してまでも求めた闘いとはどのような闘いなのか?
私は柴田勝頼の次なる闘いが見たい。
そして、何より、もう一度、新日本のリングで、柴田勝頼のケンカストロングスタイルが見たい。

************************

「両国での死闘」

2・20両国国技館。
史上初となるIWGPと三冠ヘビーのダブルタイトルマッチ。
IWGP王者・天山広吉と三冠ヘビー級王者・小島聡の決戦は想像を絶する死闘でした。
プロレスを担当して約2年、これほどまでの死闘は見たことがありません。
今回のコラムはストレートで行きます。
『ワールドプロレスリング』を見て下さい。
そこには、「プロレス」の残酷さがあります。
そして、「プロレス」の可能性があります。
観客の大歓声を背中に感じながら、「プロレス」とは如何なるものか?
自分自身に、プロレスに対しての根源的な問いを発しながら、目の前の死闘に引きずり込まれていきました。
みなさんも『ワールドプロレスリング』を見て、是非一度考えて頂ければ幸いです。
人々は何故「プロレス」に熱狂するのか。
何故、涙を流すほど感情が溢れて来るのか。

 
 
    
前の記事を読む 次の記事を読む  

トップ > パーソナルトップ > プロフィールトップ > エッセイバックナンバー