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3月2日 LCC(格安航空会社)元年、日本の空が本格的に変わります!

今年はLCC(格安航空会社)元年です。
いよいよ、日本のLCC3社が国内線に就航し、日本の空の大競争時代の幕が開けます。
先陣を切って関西空港を拠点に新千歳や福岡に就航したピーチアビエーションは、4000円弱から5000円弱という魅力的な値段を打ち出しています。
安いですよねー。でもこれがLCCの常識なのです。

海外ではもうすでにLCCは市民権を得ていて、世界全体の航空旅客の25%はLCCが占めています。
特にLCC先進国といわれるヨーロッパ・EU域内ではシェアは4割、アメリカでも3割に達しています。実はお隣の韓国でもLCCは4割を占めているのです。
逆に言えば、LCCが広まっていないのは、世界中で日本だけといっても過言ではなく、日本の空は鎖国に近いような状態にあったのです。

このLCC元年をチャンスととらえているのは、航空会社だけではありません。
赤字の続いてきた地方空港も、今いっせいに、LCCに活路を見出そうとしています。

私は先日、そのうちのひとつ、佐賀空港を取材しました。佐賀空港は1998年に開港したものの、利用者数は見込みを大きく下回り、累積赤字は85億円にも達していました。



佐賀空港空撮

しかし、今年1月、その佐賀空港に中国のLCC春秋航空が就航し状況は一変しました。春秋航空が就航する日にはロビーに客が溢れ活気に満ちています。これまでの佐賀空港では考えられなかった光景です。

佐賀から上海まではおよそ1時間半のフライトで、最安値のチケットはわずか3000円です。上海行きの便では、中国の団体客のみならず、佐賀の大学生やこれまで海外旅行をあきらめていた熟年の方々も利用していました。中には海外旅行は新婚旅行以来30年ぶりという女性もいました!
さらに北九州など九州各地からわざわざ電車などを乗り継いで佐賀空港を利用する人も増えています。



春秋航空機内

LCCには空港やその地方を活性化させるインパクトがあるのです。
例えば、LCC先進国のヨーロッパではLCCが就航するとどんな片田舎の町でも訪問客が一気に増加しその地方が活性化するという現象が起きていて、地方自治体の間でのLCC誘致合戦も起きています。

佐賀空港も、北九州空港と熊本空港との誘致合戦を勝ち残って春秋航空就航にこぎつけました。空港を管理する佐賀県が着陸料全額補助や3年間の団体客県内宿泊費の一部補助などの破格の条件を提示したのですが、これもLCCが空港のみならず地方全体に及ぼす経済効果を考えてのことでした。

そしてLCC元年の今年、すでに日本の空に変化が起きています。
日本の元祖LCCとも言われるスカイマークが、成田空港などから大増便の攻勢をかけているのです。
スカイマークの料金は例えば成田−那覇路線では4週間前までに買えば6千円弱、普通運賃でも他社の半額以下です。
こうした魅力的な料金設定の結果、沖縄発着便の全路線の搭乗実績を見てみると、今年1月はJALやANAが対前年比で減らしている一方で、スカイマークはほぼ倍増しました。

さらにその先の那覇―宮古島路線ではスカイマークが激安の3800円という価格を打ち出したことで、競合するANAやJTAは最低運賃を同じ額まで引き下げざるを得ませんでした。その後スカイマークはさらに2800円まで値下げしました。
こうした結果、今、宮古島を訪れる観光客が大幅に増えているそうです。
一方危機感を抱いた隣の石垣島では、議会が早期のスカイマーク就航を求める決議を行い、署名運動まで起きています。

実は日本はこの10年、唯一先進国の中で航空旅客数が伸びていません。
それは、世界中で普通に利用されているLCCが存在しなかったということが大きな原因と考えられています。

日本の航空業界は長年、航空行政の保護下に置かれ本当の意味での自由化は行われていませんでした。
国内線には実質ANAとJALしかなかったのですから、一時倒産したJALが放漫経営をやめてしっかりした経営を行えば業績が回復するのは自明の理でした。

海外に比べてぬるま湯といわれた航空業界が、今年LCCによって本格的に活性化されます。
ヨーロッパではLCC参入後、EU域内での航空旅客数が40%も増加したそうです。つまり、これまで飛行機をあきらめていた人々が気軽に利用するようになり、地域間での人の往来が劇的に増えているのです。
日本でも今年LCCが、行き詰っている経済の起爆剤になることが期待されますね。

   
 
 
    
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