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9月7日 10万年後の世界について考える取材でした!

みなさま、突然ですが、10万年後の世界って想像がつくでしょうか?
イメージするのも難しいくらい膨大な歳月ですよね。
調べてみますと、今から10万年前と言えば、日本では旧石器時代、ヨーロッパなどでは、ネアンデルタール人が生きていた時代です。

そんな10万年という膨大な歳月が流れるまで、危険性が残り続けるものがあります。
それが、各原子力発電所に保管されている使用済み燃料棒を再処理した際に発生する高レベル放射性廃棄物、いわゆる核のゴミなのです。




日本では、使用済み核燃料は六ヶ所村にある再処理工場でプルトニウムやウランを抽出することが計画されています。
その際に発生する高レベル放射性廃棄物は、最終的にガラスで固められ金属などで覆われて、地中深くに埋める地層処分にすることが法律で決まっています。

しかし、その法律制定からすでに10年ほどが経ちますが、六ヶ所村再処理工場はトラブルが続きいまだに本格稼働できていませんし、地層処分の候補地に手を上げる自治体は どこにもありません。

このままでは、早晩、各原発サイトのプールは一杯になり、将来的には使用済み核燃料の置き場がなくなってしまう可能性すら考えられます。

こうした問題を取材するため、先日、北海道最果ての地、幌延町にある深地層研究センターを訪れました。

ここは、高レベル放射性廃棄物の最終処分の研究のために、地下深くの地層の状態などを調べる目的で建設された研究施設です。
現地ではすでに地下250メートルまで立坑が掘られ、岩盤の強度や地下水の流れ方などの研究が進められていました。




私たちの取材が許可されたのは地下140メートル地点の坑道でした。
ここは、大昔は海底だったといいます。その証拠に、地層からは大きな貝の化石が出てきたり、
地下水自体も塩分を含んでいて、実際に飲んでみると、ほんのりとしたしょっぱさが感じられました。

この地下研究施設を使って、地下水の流れ方など地層処分に関する研究を進めているのが、日本原子力研究開発機構です。
機構は、地元の幌延町で、この地下施設での研究の進み具合などを、年に2回住民に説明しています。
その住民説明会も取材しましたが、総研究費600億円ほどの内これまですでに300億円ほどが使われていることなどから、この研究施設がそのまま本当の最終処分場になってしまうのではないかと、心配する住民の声が相次いでいました。

またもし最終処分場になってしまった場合に、地層も新しく火山や地震も大変多いこの日本で、将来、放射性物質が漏れ出すことは本当にないのか、安全性は大丈夫なのかという点でも皆さん大変心配していました。

ちなみに、海外ではフィンランドが最終処分場の建設を始めていますが、日本よりもはるかに地盤が古く
頑強で地震や火山も少ない現地ですら、地下深くに建設する最終処分場は本当に大丈夫なのかと問題になっています。

それは無事に廃棄物を埋めたとしても、その場所の危険性を後世の10万年後の人々にどう伝えるのかということなのです。

高レベル放射性廃棄物が安全になるとされる10万年後の世界。
10万年後と言いますと、人類が生存しているかわかりませんし、少なくとも言語が変わっている可能性は高いと考えられます。

フィンランドでは、そうしたことも想定して、処分場の入り口をコンクリートでふさいだ後、そこに人間が恐怖や不安感を抱くような画を掲げようとしています。

しかし逆に考えると、危険ということを知らせられたとしても、危険だからこそ開けてしまおうと考える人(?)が現れるかもしれません。




このように考えてみますと、この高レベル放射性廃棄物の地層処分は問題だらけといえます。
しかし、日本の各原発からは次々と核のゴミが出続けるわけですから、この問題は絶対に放っておける話ではありません。また、仮に原発を止めたとしても、すでに大量の使用済み燃料棒があるわけですから、
この問題から目をそらすわけにもいかないのです。

フィンランドでこの地層処分の問題を描いた映画『100000年後の安全』で語られるセリフにあるのですが、私たちは正に、『ある日新しい火を発見した。しかしそれは消せないほど強力な火だった…』のかも知れません。

今回の取材では考えさせられることが非常に多くありました。

   
 
 
    
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