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1月2日 勝負の一本


これまでの人生で、「勝負をかける時」には栄養ドリンクを飲んできました。
例えば、大学受験。例えば入社試験最終面接。例えば研修最後の日。

そんな話を部内でしていた、2年前。
確か入社1年目の年末だったと思います。

研修幹事でもあり、
今もなおいつも私の「実況」を気にかけてくださる中山アナに、
一本の栄養ドリンクを頂きました。

「番組関係でもらった」というそれは、自分では間違いなく買わないであろう、
一本数千円もする、非常に高価な品でした。

高価なもの故に遠慮する私に、中山アナがこう言いました。
「わかった。じゃあ野上が、ここが勝負だ!と思う実況の時にこれを飲めよ!」
恐らく中山アナは、今ではそんな発言をしたことを覚えていないと思います。(笑)
ただ、あの日以来、その言葉と一本の栄養ドリンクが、
私が担当する実況前日に、必ずひっそりと、頭の中にやってくるのでした。

「飲む?飲まない?」と自問し続け、「いや。まだやめておこう。」と自答し続け、
気付けば約2年が経っていました。

2009年11月。明治神宮野球大会・大学の部・準決勝。
その試合の実況前に、気合いを入れるべく、いつものごとく、
栄養ドリンクに目をやりました。
すると、ふと、あることに気づいてしまったのです。
栄養ドリンクのパッケージに「使用期限:09年10月」と記されてあったのです…。

これまでいつだって、
実況に臨む際には「ここが勝負だ」と思って取り組んできました。
それが、プロレス班で教わった「最大の教え」だと思っています。
しかし、心のどこかで「これで目標達成ではないだろう?」
と自分に言い聞かせるもう一人の自分もいました。

「限界まで勝負する。でも目標はもっと上にある。」
きっとそうした想いが、入社以来今まで、
自分の歩を前へと進めてきたように思います。

結局栄養ドリンクは、その日に飲みました。
あれだけ気にかけていたのに、随分あっさりと飲みました。
もちろんその日が、勝負であったことに変わりはありませんが…。

さて、新たな年を迎えました。
改めまして、明けましておめでとうございます。

そして、年が明けたということは、
「プロレスの日」が迫ってきたことに他ならないということです。
1月4日・東京ドーム。
プロレス界最大の戦いが、もう、すぐそこまでやってきています。

12月下旬。実況担当試合が発表されました。
「棚橋弘至VS潮崎豪」
新日本プロレスの絶対的なエース棚橋と、
プロレスリングNOAH新時代のエースであり、
三沢光晴の後継者とも呼ばれている潮崎が、
新春の東京ドームで一騎打ち。
プロレス界注目の「両団体エース対決」です。

様々な条件が重なり、なんと、その大一番の実況を任されました。

プロレスの試合を見て、初めて涙を流したのが、
二年前の両国でのメイン、棚橋選手の試合でした。
プロレスの実況で、
初めてプロデューサーに「この試合を喋らせてほしい」と直訴したのが、
半年前の大阪での第6試合、潮崎選手の試合でした。

棚橋VS潮崎。
実況するにあたり、ほんの少しの不安もあります。
それは、私が残してきた実績では、あまりにも少ないと思うからです。
それは、私が積み重ねてきた実力では、到底劣っていると思うからです。

それでも、気持ちはいつもと同じです。
限界まで勝負する。今までもそうでした。

年末もお正月も、気持ちを切らさず「資料整理」
私が限界まで勝負するということは、
すなわち、限界まで準備する、ということでもあると思っています。

「まずは万全の状態で1月4日が迎えられますように…。」
初詣でのお願いは3年連続同じ内容。



さぁ。いざ東京ドーム。

最高の戦いになることはまちがいありません。
最高の実況にするという決意をもっていることも間違いありません。

数千円の栄養ドリンクを、自ら購入してドームに乗り込むべきか、
今、熟慮中です。

ワールドプロレスリング放送日時:
2010年1月4日(月) 深夜1時21分〜深夜2時34分
レッスルキングダムW in東京ドーム

   
 
    
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