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7月27日 Jチャン取材記 “孤立”…もしかしたらいつか自分も?

心を揺り動かされたある日の取材から――

とある団地のとある部屋。そこで暮らしていた夫婦が遺体で発見された。妻が病死し、その後夫が餓死したとみられている。お隣さんにも、ご近所さんにも、その他外部のどこにも助けを求めた形跡がない。いわゆる孤立死だった。取材日は遺体発見から10日が経っていたにもかかわらず、その部屋のベランダには干しっぱなしの洗濯物が風に揺れていた。近隣住民から、遠くないところに親族がいるはずだけどねえ、という話を聞いてさらに寂しさが増した。あのベランダの情景が心に突き刺さったままだ。



公田町団地

全国的にも珍しい取り組みで注目を集める、横浜市栄区にある公田町団地。全体の5分の1弱にあたる約200戸の世帯では「センサー」が住民の安否を見守っている。数個の感度抜群のセンサーが取り付けられた住居では、夜中ちょっと寝返りを打っただけでも『動いた』
とセンサーが感知。団地内のセンターサーバーに送られ、担当者が異常がないかチェックするというシステムになっている。取材に協力してくださった庄司寅雄さん(77)は「万が一の時にこれがあると思うと安心感はある」と話してくれた。この運用を始めてから(2010年〜)多い時で月4,5回の救急搬送がある一方で、何日もたってから孤独死が発見されるようなケースは発生していないという。「脳トレ」と称して麻雀の会を開くなど、孤立させないための様々な取り組みが功を奏している。ただし皆が皆、最初から喜んで受け入れたわけではないようで、自分には必要ない、余計なお世話、と最初は思う人が少なくないそうだ。

選択的孤立も確かにある。煩わしい世間との関わりを自ら断つ人もいる。「孤独」ではなく、やや中立的に「孤立」という言葉を使うようになってきた背景もここにある。ただやはり、幸せな孤立は稀なのかもしれない…公田町団地で暮らす人々の笑顔を見てそう思った。

さて、今日は親に電話しよう。



 

 

 
    
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