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- 「言葉の雑学 その1」-
【田原】
今回は言葉の研究・考察とはちょっと違った視点で、「言葉の雑学 その1」を助手の坪井君から報告してもらいます。
【坪井】
普段よく目にするモノだけど、名前が出てこないモノって結構あるよね?例えば、パン屋さんでパンをつかむ器具あるでしょ?
【萩野】
「トング」ですね
【坪井】
理髪店の入り口にある赤青白の3色がクルクル回っている棒は?
みなさん!どうですか?

姿かたちはわかるけど、名前までは出てきませんよね?

早速、理髪業界で老舗中の老舗。ホテルオークラの米倉理髪店へ伺いました。

〜名前は何?〜
米倉さんのお話によりますと、あの棒は「有平棒」と書き「あるへいぼう」と読むそうです。なんでそんな不思議な名前がついているかきいたところ、諸説あるそうですが、「有平糖(あるへいとう)」という飴のような形をしているところから来たそうです。
「有平糖」は辞書にものっている大昔の飴で室町時代にヨーロッパから入ってきたそうです。色分けされた上、ねじれている形のものもあって、それが理髪店の棒と似ているのです。

〜どうして赤・青・白なの?〜
一説には静脈と動脈と包帯の色という話がありますが、これには深い歴史があるのです。理髪の原点は「外科」だそうで、1500年代に遡りますが、当時髪を切ることは手術などのために毛を剃る行為と一緒で、同時に瀉血(しゃけつ)という治療のために静脈の血を抜くこともしていました。
世界中で戦争が勃発していた頃、あのナポレオン軍がフランスの国旗を棒に巻いて治療部隊の宿舎に立てていたことからフランス国旗の3色が定着したという説もあります。

〜日本にはいつからあるの?〜
日本には明治時代初期、文明開化での「断髪令」がきっかけ。それまでの「ちょんまげ」を明治天皇が自ら切ったことで、町人を中心に一斉に髪を切り始めた。そこで断髪や髪結いの職人が「理髪」の職人へと変身し、以後急速に発展、成長していった。同時に、理髪店を示す目印として、海外から入ってきたあの「有平棒」が全国に広まったそうです。特に戦後の日本はこの有平棒の嵐だったそうです。ちなみに当時の理髪料金は一般的には300円くらいだったとか。

時代は流れ、現在は有平棒を出している理髪店は徐々に減ってきているそうです。ですが、韓国・台湾・シンガポールなどに行くとたくさん見ることができます。実は世界に誇れる、隠れた日本の製品に「理髪用のハサミ」があると米倉さんがおっしゃっていました。そんな理髪の歴史と伝統がギッシリと詰まっているのが、それを象徴する「有平棒」なのです。

【坪井】
みんなが慣れ親しんでいるモノでも意外と名前を知らない。でも調べてみると歴史があり大きな意味がそにはあるのだと実感しました。私達アナウンサーは、ひとつのモノに関わってきた過去の多くの人たちのためにも、モノの名前を大切にし、消さない努力をしなければいけないと思います。
    
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