ことばのアレコレ

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  • AYAKA OGAWA

2018/8/9暑さをどう表現する?

小川彩佳です。

先週末、フジロックフェスティバルに行ってきました。
最高に熱いステージの数々に、我を忘れて楽しんだ二日間だったのですが、
アツかったのはパフォーマンスだけではもちろんなく…。
やっぱり、暑かった。
まとわりつくような、溶けるような、体力をいとも簡単に奪われるような暑さ!
もちろん毎年暑いは暑いのですが、
今年の暑さは特別ですよね。
聞いたことのないような温度を、当たり前に耳にする日々。
気象庁も、この暑さを「災害」とまで言及しました。

そんな「厳しい暑さ」をニュースで取り上げる際、
表現する言葉として「猛暑」を使用しがちですが、
他のことばも使いたい…。
ということで、どんな言葉があるか、調べると。
出てくる出てくる!

炎暑:えんしょ…夏の燃えるような厳しい暑さ。
炎熱:えんねつ…夏の燃えるような暑さ。
苦熱:くねつ…暑さによる苦しみ。ひどい暑さ。
激暑・劇暑:げきしょ…はげしい暑さ。
酷暑:こくしょ…夏の厳しい暑さ。
極暑:ごくしょ…きわめて暑いこと。暑さの盛り。
極熱:ごくねつ…きわめてあついこと。ごくねち。
灼熱:しゃくねつ…焼けてあつくなること。焼けるようにあついこと。
焦熱:しょうねつ…こげるような暑さ。

(『広辞苑』第七版、岩波書店より)

などなど。
書いているだけで暑くなってきますね…。
苦熱、焦熱あたりなんてもはや、痛そう。
ひとつたりとも同じ解説がないところに、広辞苑の矜持を感じますが、
ここまで微妙な違いになってくると、使い分けるのも難しそうですね。

皆さんは、どんな言葉を使って暑さを表していますか?
「むしむしした」、「うだるような」「息苦しい」…などなど、
形容する言葉はあまたありますが、
名だたる文豪は、暑さをどんな風に表現しているか、
ちょっと探してみました。

“こう暑くては猫といえどもやり切れない。皮を脱いで、肉を脱いで骨だけで涼みたいものだと―”
夏目漱石『吾輩は猫である』

さすが夏目漱石。あんまり暑いと、脂肪をまるっと脱ぎ捨てたいという気持ちにもなります。

“一ふきの風も動かぬ、もーっと水蒸気のかかった八月の暑さ” 宮本百合子 『伸子』
汗が肌にぴたっと張り付く風一つない暑さの不快指数が文章から溢れてくるようです。

“「二調子か三調子、気持ちの調子を引上げないと、とてもこの強い感じは受け切れないわ」と娘は眼を眩しそうに云った。” 岡本かの子『河明り』
うーん、わかるわかる!ギアをぐいっと上げていかないとやる気が出ない日、ありますよね。

“(蒸し暑い夜)風がやんで、空一面をおおった薄い雲が、月の輪郭をかすませ、ようよう近寄って来る夏の温かさが、両岸の土からも、川床の土からも、もやになって立ちのぼるかと思われる夜よ”
森鴎外『高瀬舟』

「夏の暑さ」ではなく「夏の温かさ」。そして立ちのぼる湿気が目に見えるかのよう。珠玉の表現が、この一文にギュッと詰まっています。

“烈々とした空の下” 林芙美子 『新版 放浪記』
がつんと骨身にしみる暴力的な日差しをこんなにシンプルに表現できるなんて!

(「青空文庫」より抜粋)

うーん。皆さま、さすがの表現力であります。

まだまだ、厳しい暑さは続くようです。
うんざりとしてしまいますが、ここは開き直って、

今年は自分なりの「暑さ」の表現を増やす機会にしてみる!というのは、
どうでしょうか?

担当アナウンサー