2006年1月11日(水)
第12話 「緑の殺意」
 大型商業施設の最上階。開店を直前に控えたオーガニックレストランで、オーナーの川端敏臣(菊池隆則)にシェフの久保寺太一(小林隆)が詰め寄っている。業務契約が、久保寺に圧倒的不利な内容で締結されたからだ。しかし川端は、今辞めるなら違約金を要求すると、逆に久保寺を追い詰める。返す言葉もない久保寺。
 オープニングイベント当日。川端と久保寺は不和を押し隠し、自慢の有機野菜でゲストを迎える。場慣れした振る舞いで、自ら野菜を食べて会場を和ませる川端。ゲストの中には、宮部たまきに誘われた杉下右京(水谷豊)と亀山薫(寺脇康文)がいる。また、肉食のをも魅了した野菜の生産者、野崎春菜(七瀬なつみ)の姿も。「すばらしい野菜です」と、声をかける右京。その時、が突然、驚きの声で「春菜!」と呼び捨てにする。実は、美人ファーマーとして人気の春菜は元歌手で、世代にはアイドル的存在だったのだ。

 会場では、久保寺のスピーチが始まっている。客の中にいる川端。が、締めの挨拶を前に、川端は会場を出て行ってしまう。そのままイベントはお開きに。帰る前にトイレへ向かったが『清掃中』の札の前で立ち往生していると、フロアマネージャーが血相を変えて走ってくる。「大変です!社長が、社長が!」。
 川端は、非常階段の踊り場で死亡していた。死因は首の骨折。手にハンカチが握られていたことから、トイレに向かったが清掃中だったため、別の階のトイレに行こうとして非常階段を利用。慌てて足を滑らせたのだろうと推測された。だが、そのトイレをのぞいてみると、中に清掃者の姿はない。外し忘れたのだろうか? 宴たけなわに社長がたまたまトイレに行きたくなり、たまたま清掃中の札が取り忘れられていたため、階段を利用したまたま足を滑らせた。そんな偶然が3回も続くものだろうか…?
 右京は、さっそくスタッフの聞き込みを開始。そんな中2人は、久保寺が川端のデスクからファイルを持ち出すところを目撃する。
 イベントの収録ビデオを入手した右京たちは、川端が会場を出て行く様子をチェックする。川端の側には、たまきと春菜。怪しい人影はいない。やはり事故か? だが現場検証の結果、非常階段には足が滑りやすい細工がされていたことが分かる。川端が慌ててトイレに向かう原因さえ作れれば、『清掃中』の札と合わせて“遠隔殺人”が可能ということだ。
 右京は、川端が食べた野菜の中に、アレルギーが理由で吐き出したいものが混ざっていたのではないかと推理する。実際、川端はネギ類にアレルギーを持っていた。また、外食産業界に進出する前は、春菜の芸能マネージャーだったという意外な過去も分かる。
 イベント当日、春菜はソースに使うネギ属のハーブを、食材として提供していた。春菜の農園は、川端の融資で成り立っていたが、返済のめどは立っていなかったという。古い付き合いの春菜なら、川端のアレルギーを知っていたはず。また、調理した久保寺には契約上の恨みがあり、混入のチャンスもあった。右京の推理が次第に現実味を帯びてくる。ところが、川端の胃からネギの成分は検出されなかった…?