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ストーリー
第17話

『同時多発誘拐 消えた16人の子供達』 (2004年2月18日放送)
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都内各地で次々と子供たちが誘拐される事件が発生した。大規模なテロか!?警視庁も人手が足りなくなり、普段は仕事など回ってこない特命係の右京と薫も駆り出されることになる。

 事件は15人もの子供たちが誘拐されるまでに発展し、右京と薫は事件に巻き込まれた児童養護施設を訪れる。施設は学園長のちとせと副園長の則彦夫妻が経営しており、誘拐された純平君はちとせ夫妻の実子ではなく、施設に預けられた子供だった。そんな純平と同じような境遇の子供たちが心配そうに右京らを見つめている。犯人から要求された身代金は1億円。ちとせは警察の準備金に頼ろうとするが、数が数だけに手配できるかどうかわからない…。

 そして右京と薫が児童養護施設で待機していると、犯人から2回目の電話が入った。要求は「金をデイバッグに入れて都庁前の都民広場へ行け」というもの。犯人は金を運ぶ人間を女性に限定、都民広場にはデイバッグを抱えた女性たちが集合する形になる。そんな折り、被害者の一人で船村エリという女性の携帯に犯人から連絡が入る。新宿駅の高速バスターミナルからバスに乗れ、という指示だったが、行き先はバラバラだ。警察はそれぞれをマークすることにするが、そのとき母親が16人いることに気が付く。まさか犯人が紛れ込んでいるのか…?一瞬緊張が走ったが、どうやら警察に通報して来なかった被害者だったことが判明する。結局、16人もの子供たちが誘拐されたことに…。

状況を無線で確認した右京と薫は、バスに同乗しようとするがチケットは売り切れ。犯人が買い占めてしまったようだ。仕方なく右京らは捜査一課の伊丹らと共同戦線を張り、一緒に車でバスを尾行することに。バスにはちとせと伊丹らが担当する船村エリの2人だけ。そのときエリの携帯に「相模湖出口で高速を降りろ」という犯人の指示が入る。高速バスの行き先とは違うが背に腹は代えられない。ちとせとエリは運転手に直訴し、犯人の指示どおりに高速を下りる。

 しばらく行くと突如バスの中に煙が発生。回り込んでバスを止め、薫らは車内に飛び込んだが、ちとせとエリは保護したものの身代金がなくなっている。同時に運転手も姿を消していた。どうやら運転手が犯人だったらしい。まんまとしてやられた右京らは唇を噛むしかなかった…。

そして16人の子供たちは無事解放され、ちとせのもとにも純平が帰ってきた。結局、事件はちとせと船村エリの身代金だけを狙ったもので、他の誘拐は全て警察を攪乱するための捨て駒だった。船村エリの夫・船村音也は南急百貨店の副社長で、しかも事件には南急バスが使われていたことから、犯人は南急グループの関係者と見られる。そんな犯人側の思惑通りに事が運び、面目丸つぶれの警察は、唯一犯人を目撃しているエリとちとせの協力で似顔絵を作らせ、犯人逮捕に全力をあげる。ところが出来上がったふたつの似顔絵はまるで似ていなかった。

なぜそんなに犯人像が違うのだろうか。そんな疑問を抱きつつ、右京と薫は子供たちが誘拐された場所を検証してみる。すると、被害者の自宅は都内全域に広がっているにも関わらず、誘拐された場所は都内南西部に集中していた。警察の上層部は大規模な組織的犯罪と考えているが、この状況を見ると思ったより少ない人数で犯行が可能なのではないだろうか。

事件の概要についてちとせとエリの証言は一致していた。しかし犯人の似顔絵だけは違っている。右京と薫は鑑識課の米沢とともに事件に使われたバスで事件の流れを検証することに。すると、ちとせが書いた似顔絵には右眉上に大きなキズがあったが、ちとせとエリが犯人の顔を目撃したと思われる状況では犯人の右眉は見えないことが判明する…。

そんな折、なんと身代金が戻ってきたという連絡が入る。船村家の裏庭に段ボールに入れて投げ込まれていたらしい。しかし中身は4853万円しか入ってなかった。なぜ犯人はそんな中途半端な額だけ戻したのだろうか…。右京と薫はエリに話を聞きに行き、ついでに似顔絵の件も訪ねてみるが、エリは犯人の右眉のキズには気付かなかったという。と、そんなとき右京は誘拐されたことなどすっかり忘れ、無邪気に遊んでいるゆずる君がキーホルダーを持っているのを見かける。そのキーホルダーは事件のときエリが背負っていたデイバッグに付いていた物だった。確かデイバッグは犯人が持ち去ったはず。なぜゆずる君の手元に戻ってきているのだろうか…?

まさか犯人は…。右京と薫はちとせと則彦に話を聞くため、児童養護施設を訪れる。事件は大規模な組織的犯罪ではなく数人で可能だったこと、誘拐された純平君が解放されたときに自分の役目を果たしたから褒めてほしいと取れるような発言をしていたこと、実行犯であるバスの運転手がちとせと則彦が経営する児童養護施設の出身者であったこと、そしてエリがデイバッグに付けていたキーホルダーがゆずる君の手元に戻っていたこと…。右京と薫がそんな事実を立て続けにちとせと則彦にぶつけると、則彦は観念したように借金返済のために計画を企てたことを自白する。

それでもちとせは犯行を認めようとしなかった。養護施設がなくなったら子供たちがバラバラになってしまう。そんなツラい思いはさせたくない。ちとせはあなたたちにこの気持ちがわかるか、と右京に訴えかけたが、右京はにべもなく「わかりません」と答える。しかしそれはちとせたちの気持ちがわからないという意味ではなく、どうしてちとせたちが子供を誘拐された親の気持ちを考えなかったのか、それがわからないという意味だった。子供を誘拐された親たちは命が縮まるような思いをしたはず。そんなことにすら思いが至らなかったあなた方に子供たちの心配をする資格などない、そんな右京の言葉にさすがのちとせも観念する。

事件は養護施設を維持するための資金欲しさの犯行と大きく報道され、世間の同情を集めたが、結局施設は閉鎖されてしまうこととなる。子供たちはまたバラバラの生活を送らなければいけないが、大事なのは施設や家という入れ物ではない、たくましく生きていって欲しいと願う右京と薫だった。(つづく)


児童養護施設・学園長
望月ちとせ /高田聖子
児童養護施設・副園長
望月則彦 /小市慢太郎
略取・誘拐事件
平成15年に日本国内で発生した略取・誘拐事件は200件以上。被害者は小学生が最も多く、全体の65%近くを占めている。また被害場所としては道路上が最も多く、全体の57%ほどを占めている。
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