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ストーリー
第16話

『白い罠』 (2004年2月11日放送)
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加茂内に情報を流していたのは北川刑事だった。その北川は加茂内を殺し、真相を知ってしまった美濃部も殺害。さらに沙雪に接近したところを、右京と薫が無事逮捕にこぎつけた。そのとき沙雪を守るように例の50過ぎの男が姿を現した。北川が放った銃弾で傷ついた男は工藤といい、「私は人を殺しました」という言葉を残し病院から姿を消してしまう。

工藤とは一体何者なのか。右京らは病室に残された「みどり」というマッチを手がかりに、その店を訪ねる。するとその店は小樽にある沙雪の母・みどりが営む小料理屋だったことがわかる。案の定、工藤はよく店に来ていた。そして常連となった工藤にみどりが沙雪のことを相談したらしい。それで工藤は沙雪の後を追うような行動をとったのだろうか…。

沙雪は真二の説得に応え、再び大学へ行くことになる。そんな様子を見届け安心した右京らは工藤の行方を追う。が、右京は真二の無償のやさしさに引っ掛かるものを感じ、札幌で真二の周辺を調べ出す。大学の学生課で調べると、真二が東京の名門大学から編入していたことがわかった。さらに美和子の調べで、沙雪の父が殺した被害者には息子がいたことも判明する。その名前は津村真二。父親を殺された後は母親の姓を名乗っているらしいが、その男はまさしく沙雪に近づいた真二に間違いない。ということは、復讐のために真二は沙雪に接近した!?

あわてて大学構内で真二と沙雪の行方を探す右京と薫だったが、そんな2人は何者かに殴られ倒れている工藤を発見する。どうやら真二に襲われたようだった。真二が沙雪に対して復讐をしようとしていることは間違いない。さらに工藤に正体を見破られ、かなりあせっているはずだ。追い詰められた真二はいったいどこで沙雪への復讐を果たそうとするだろうか…。右京はこれまでの経緯を思い返し、加茂内が死んで落ち込んでいる沙雪を真二が誘った教会に行き着く。そこは父親と兄が殺されたとき、真二が母親とともにいた教会。栄一のタクシーに乗り込み、右京と薫は急いで教会へと向かう。

二人が教会へ到着すると、まさに真二が銃で沙雪を狙っているところだった。止めさせようとする右京と薫に対して真二は、父も兄もまさか親しくしていた男に殺されるとは思っていなかったはず。だから自分も沙雪に自分を信じさせてから沙雪の命を奪いたかった、と言う。そんなやりとりを聞いた沙雪は、自分を撃っていい、などと言い出す。自分なんて生きる価値がないから、と。その言葉を聞いた真二は一瞬躊躇し、その瞬間薫が真二に飛びつき、間一髪で難を逃れる…。

私にはあながた一番苦しんでいるように見える。取り押さえられた真二に向かって右京はそう言った。沙雪も真二と同じようにあの事件で辛い思いをした人の一人。同じ苦しみを味わうなら、真二には“許す”という選択肢もあった。最後の最後で真二は沙雪を許したのだった…。たとえどんなに辛く、やりきれなくても、人はそうやって生き直さなければならない。倒れこんでいる真二に向かって、右京は最後にそう言った。

ようやく事件が収まり、右京と薫はあらためて工藤と会う。そして話を聞くと、なんと工藤は死刑囚だった沙雪の父親の担当看守で、さらに死刑を執行した刑務官だったという。さらに刑務官になる前は小樽で町工場を営んでいたとも。しかし不況の煽りで元請けから発注を切られ、倒産してしまったらしい。自暴自棄になり、自殺や元請けを殺害することも考えたが、親身になってくれる恩人がいて、なんとか刑務官の仕事に就くことができたという。そしてそれから二十数年後に沙雪の父と出会い、その経歴を読み、自分と同じ境遇だったということを知る。もしかしたら自分も沙雪の父と同じ運命を辿っていたかもしれない…。そんな思いから沙雪の父に感情移入してしまい、いろいろ話すうちに娘・沙雪の話も聞くようになる。しかしどんなに感情移入しようとも刑は執行しなければならない。そして最後の瞬間、沙雪の父に一言もかけてやれなかったことを今でも後悔しているという。

沙雪はそんな話を傍らで聞いていた。それに気付いた工藤はコレッジョの画集を沙雪に渡そうとする。沙雪の誕生日にコレッジョの画集を送っていたのは美濃部刑事ではなく工藤だったのだ。拘置所で沙雪の父と親しくなった工藤は沙雪がコレッジョの画集を欲しがっていることを聞き、沙雪に画集を送っていたのだという。そして最後の一冊となった今年、沙雪に会い全てを話そうとした。しかしみどりの店に通い、親しくなるうちに言い出せなくなってしまった…。そんな話を終え、工藤が沙雪にコレッジョの画集を渡そうとすると、沙雪はその手を払い、受け取ろうとしない。そして私なんて生きる価値がない、そんなことを言いながら走り去ってしまう。そしてみどりからももう二度と来ないで欲しいと告げられ、工藤は失意のうちに帰路についた。


来なければよかった、そんな後悔を胸に工藤は右京や薫とともに列車に乗り込む。工藤は三十年も死刑囚と手にかけてきた。そうすることで少しでも被害者の憎しみを晴らし、加害者の家族の苦痛を癒せると工藤は信じてきた。しかしそうではなかったのだろか?今までの自分の人生が否定されたような気持ちになる工藤。そんなとき列車がとある駅へ到着すると、ホームにコレッジョの画集を持った沙雪が立っていた。沙雪は列車を追いかけ画集を掲げていた。そんな姿を見た工藤は思わず号泣する。工藤の人生は否定されたわけではなかった。(つづく)


女子大生
本宮沙雪 /前田愛
謎の男
工藤伊佐夫 /小野武彦
沙雪の大学の友人
沖真二 /内田朝陽
タクシー運転手
若杉栄一 /マギー
小樽
北海道西海岸のほぼ中央に位置し、海・山・坂など変化に富んだ人口約14万7000人の港湾都市。アイヌ語で「砂浜の中の川」という意味の「オタルナイ」という言葉が語源となっている。「北のウォール街」と呼ばれた道内一の銀行街など、数多くの近代建築が残り、観光名所となっている。
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