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ストーリー
第6話

『殺してくれとアイツは言った』 (2003年11月19日放送)
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  小野田官房長(岸部一徳)の同級生で人気犯罪小説家の菅原英人(大杉漣)の自宅に、脅迫状と切断された人間の指が送りつけられるという事件が発生した。前日、ラジオで「誰かに命を狙われてみたい」などと不用意な発言をしたことが原因らしい。小野田からの依頼を受けた右京(水谷豊)と薫(寺脇康文)は事件を担当することになる。

 自宅を訪ねた右京と薫は、命を狙われているかもしれないというのに不遜な態度をとる英人に出迎えられる。そんな英人を心配して小野田に相談したのは妻の珠江(結城しのぶ)のようだった。何事にも図々しい英人と違い、珠江は「主人がご迷惑をおかけします」としきりに頭を下げる。

 右京と薫は本人からの依頼もあり、英人の身辺警護をすることに。サイン会を終え、小野田と4人で飲みに行くと、自分が狙われていることなど忘れたかのように英人はホステスを相手にはしゃいでいる。そんな様子を見ながら、小野田は英人が売れないころ珠江がずっと苦労させられてきたと言う。

 泥酔した英人を送り届け、外で見張りを続けた翌朝。送られてきた宅配便を開けた途端、爆発した爆弾で珠江が死亡した。単なる脅迫事件は殺人事件に発展。警護しながら死者を出してしまった右京と薫は、捜査一課から批判されることに。

 爆発した宅配便は珠江の実家を装って出されていたことが判明した。爆弾の仕組みもプロ並み、しかも珠江の実家の住所を知っていたとなると、犯人は相当英人の周辺を調べたらしい。それにしては英人の不謹慎な発言から日数が経っていないようだが…。

 そんな折り、再び英人の家に切断された指が送りつけられた。今度の指からも犯歴などはなく、身元を断定するには至らない。ここまでしつこく本気で命を狙うには、きっと訳があるはず。が、妻を失ったショックに打ちひしがれる英人は、心当たりなんかない、と叫ぶとヤケ酒をあおるだけ…。

 右京らは英人を自宅から別の場所へ移動させるが、狭いアパートに我慢できないと飲み歩くことに。しかし、酒を飲んでも珠江を失ったショックを忘れることはできず、英人は人目もはばからず泣きじゃくる。

 結局泥酔した英人に肩を貸しながらアパートへの道を歩いていた右京と薫は、アパート近くで左手に包帯をした不審な男を発見する。右京が男に近づき拘束しようとしたその時、英人が急に腹が痛いと苦しみだす。右京も結局不審な男を取り逃がしてしまうが、路上に落ちていた封筒を拾う。封筒の中には脅迫文が入っており、やはり逃げた不審な男が犯人だったようだが、右京はその男をどこかで見た覚えがあるという…。

 さすがに不審な男から狙われるのにうんざりした様子の英人は記者会見を開き、犯人に対して新作の印税すべてを賞金にかけるという。その額はなんと1千万円以上。さらに犯人に対して「俺を殺せるものなら、殺してみろ」などと挑発する。

 すると翌日、英人の自宅に犯人からと思われる「今回は見逃してやることにした」といった内容の手紙が届く。以前の脅迫状と見比べてみると筆跡は似ており、同一人物から送られてきているようだ。英人はこれで一件落着とウィスキーを飲もうとするが、右京は犯人を捕まえるまでは何も終わらないと気を抜かない。

 しかしまもなく犯人と思われる人物が遺体となって発見されてしまう。その男は以前、右京たちが麻薬捜査のときに見掛けた麻薬の売人と思われるホームレスの男だった。死因は麻薬のやり過ぎによるショック死のようで、英人の自宅に送りつけられてきた指とのDNAも一致し、やはりこの男が犯人のようだ。しかし右京はホームレスの男が麻薬を買うお金を持っていることに不信感を抱く…。

 やがて英人は心の傷を癒しながらスペインで本を書いて暮らすという。その出発の日、ハイヤーに荷物を積み込んでいる英人の前に右京と薫が現れる。そして右京は英人に「狙われていたのはあなたではなく奥さんの方だった。そして狙っていたのはあなただ。」と切り出す。英人はばかばかしいとばかりに相手にしようとしないが、右京は立て続けに英人が犯人だと推測した理由を語る。脅迫状に同封されていた指はホームレスの男から金で買った、小包が爆発した際に英人だけとっさにハンカチで口を覆い軽症で済んだ、不審な男のことをジャンキーと知っていた…。

 そして極めつけは脅迫状の字体。以前、英人が鑑識課の米沢宛てに書いたサイン本の字体と比べると、「悪」の字が旧仮名遣いであったり、「奴」と「如」の女偏に特徴があるなど共通点が見当たる。ホームレスの男は英人が書いた脅迫状を丸写ししたため、文字の特徴がそのまま出てしまったようだ。しかしそれでも英人は自分が犯人だという証拠はあるのか、と開き直る。確かに決定的な証拠はない。そして証拠がなければ警察としては手も足も出ない…。立ち去ろうとする英人をただ見過ごすしかない右京と薫。

「今はその時間がありませんが、いつか必ずあなたを落とします」

 歩いていく英人に右京がそう語りかけた次の瞬間、英人のサイン会に来ていた青年が現れ、いきなり大型ナイフで英人を刺した!右京と薫はとっさにその青年を取り押さえるが、英人の腹からは大量の血が流れ出す。英人が青年になぜ自分を刺したか尋ねると、青年は「殺されたいって言ってたから」と答える。

「こんな退屈な国で生き続けるくらいなら、死んだ方がマシか…」

 英人はそう語りながら、ゆっくりと目を閉じていく。その唇には苦い笑いが浮かんでいた…。そんな英人を、なすすべもなくただ見守るしかなかった右京と薫だった。(つづく)


人気小説家
菅原英人 / 大杉漣
警護
国内外の要人の身辺を守る活動を「警護」と呼ぶ。
特に警護のスペシャリストとして活躍している警察官を
SP(Security Police)と言う。
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